幼なじみ「約束、守れよ」川口青陵・田中主将 vs 浦和実・植木投手

 主将とエース。幼なじみの2人が、互いのチームを率いてぶつかり合った。

 1回表1死。川口青陵の田中優主将(3年)が打席に入ると、浦和実の植木龍之介投手(同)が外野に向かって両手を挙げ、前進守備を指示した。「絶対に出塁する」。田中選手はセーフティーバントをやると見せかけて粘り、四球を選んで好機を作った。

  2人の自宅は自転車で10分ほどの距離。小学生の時から野球仲間だったが、別々の高校で腕を磨いた。相手の長所も短所も知り尽くしている。昨夏の大会でも対決。植木投手は「田中には、外野に飛ばさせない」と自信を持って投げたが、ポテンヒットを打たれた。試合で勝ったのは浦和実だった。

 「勝った方が甲子園へ行こう」。この日の朝、携帯電話のメールで約束し合った。
 田中主将は、3度の対決で安打こそなかったが、二つの四球を選んだ。植木投手がマウンドを降りた後の9回、敵失で出塁し、だめ押しとなる4点目の本塁を踏んだ。「出塁することが、2番打者として、主将としての役割」と納得のいく結果だった。

 植木投手は、連投の疲れがたまっていた。「ほかの選手に迷惑をかけたくない」と、エースの意地で登板したが、いつもの球威がなく、失点してしまった。6回からは一塁を守り、救援投手に声をかけて励まし続けた。

 今年は、川口青陵が雪辱を果たした。試合後、田中主将は植木投手から、握手で夢を託された。

 「約束、守れよ」

朝日新聞埼玉版)