借り返し勝利宣言 川口青陵の野川投手

 試合後のダッグアウト裏。汗が玉粒のように次々と額に浮かんだ。「次もあるので、飛ばしすぎずに7割ぐらいの力で投げた。一戦必勝で甲子園に出場して、全国制覇を狙いたい」。一言一言、言葉を選ぶようにして試合を振り返った。

 心の中は燃えていても、頭は常に冷静だった。一回。2死から連打を許して、いきなり一、二塁のピンチを迎えた。それでも、平常心は忘れない。「打たれたら打たれたでいい。無理して抑えなくてもいい」。昨夏のことが、走馬灯のように頭の中をよぎっていた。

 4回戦敗退の昨夏。最後の相手はほかならぬ浦和実だった。2番手として登板しながら、心乱されて無念の3失点。先輩から託されたマウンドを最後まで守り切れなかった。「先輩たちの夏を終わりにしてしまった」。同じマウンドに立っていた同学年の植木が、一層大きく感じた。

 あれから1年。ウエートトレーニング、走り込み、メンタル強化など基本練習を地道にこなした。秋はエースとして関東大会8強へチームをけん引。一冬越え、直球の最速も140キロを超えた。今では県内を代表する左腕に成長し、以前の気持ちの弱さも出なくなった。

 最後は植木に向かって力強くガッツポーズ。初の16強進出から始まり、次々と部史を塗り替えてきた初物尽くしの「ルーキーズ」。チームを4強に押し上げ、青いユニホームを身にまとったエースの夏は、まだまだ終わりそうにない。

埼玉新聞

◇クールに絶好調

 川口青陵の打者の多くは、声を張り上げて投手をにらみ、バットを振り回して構える。そんな中、6番の吉田剛(3年)は、珍しく冷静なしぐさで打席に入る。

 この日は5打数3安打。二、四回は会心の長打で得点の足がかりをつくった。「4番に返り咲きたい。今なら自信がある」。4番を任された2試合目まで不振だった悔しさが、ここ3試合の絶好調につながっている。

(読売新聞埼玉版)

◇雰囲気変える一打

 川口青陵は四回、無死一、三塁と好機を迎えた。小松崎章監督は打席の武田竜哉選手(3年)にスクイズを指示。しかし、相手バッテリーに投球を外され、三塁走者がアウトになった。「追加点を焦ってしまった」。ベンチの雰囲気が悪くなった直後、武田選手が右前適時打を放った。今大会は打率1割台と不調だったが、「やるときはやります」とにっこり。小松崎監督は「私のミスを帳消しにしてくれた」と感謝していた。

毎日新聞埼玉版)