浦和学院、21年ぶり4強 初決勝懸け2日敦賀気比戦

 第85回選抜高校野球大会第10日は31日、兵庫県西宮市の甲子園球場で準々決勝2試合を行い、浦和学院北照(北海道)を10−0で破り、就任1年目だった森士監督の下、初出場した1992年の第64回大会以来、21年ぶりの準決勝進出を決めた。

 県勢の4強入りは2008年に準優勝した聖望学園以来5年ぶり5度目。浦和学院は大会第12日の4月2日、準決勝第1試合で敦賀気比(福井)と初の決勝進出を懸けて戦う(11時)。

 部の歴史に並ぶ一戦で、昨秋の明治神宮大会4強チームを投打で圧倒した。一回、4番の高田が先制パンチ。2死一塁で2試合連続アーチとなる左越え2ランを放ち、流れをつかんだ。3試合連続先発の左腕小島は今大会一番の出来。五回まで1安打1四球と危なげなく抑えると、裏の攻撃で打線が追加点を奪った。

 1死二、三塁で打席は2番贄。サインミスで三塁走者が憤死し、2死二塁となった直後、右中間を破る三塁打で3点目を挙げた。さらにこの回、敵失で1点を追加。七回には相手投手の乱調とエラーに乗じ、山根の走者一掃の二塁打など打者9人で6得点した。

 小島は7回を投げ、二塁を踏ませたのが1度だけのほぼ完璧な投球。八回から救援の山口も2回を三者凡退で無失点リレーを完成させた。

 届きそうで届かなかった21年前の先輩たちにようやく肩を並べた。92年、前年秋に就任した27歳の森監督が率い、初めてセンバツの土を踏んだ浦和学院。初戦で福井商から初白星を挙げると、東山(京都)育英(兵庫)を次々と撃破。準決勝では優勝した帝京(東京)に1―3で屈したものの、新風を吹き込んだ。

 しかし、その後は昨年まで7度の出場で全て準々決勝の壁を越えられなかった。98年の第70回、02年の第74回大会は8強止まり。昨年も準々決勝で、優勝した大阪桐蔭に1点差で敗れ、涙をのんだ。

 3年連続9度目出場、春夏合わせて3季連続出場で迎えた今大会。48歳となり、出場監督中最多18度目の甲子園に臨んだ森監督の下、大舞台での経験を積んだ選手たちが聖地で伸び伸びと躍動した。

 「(決勝は)私自身が見たことのない世界。(準決勝は)気と気がぶつかり合う試合になると思うので楽しみ」と気持ちを込めた森監督。22年目のベテラン指揮官に率いられた“ウラガク”ナインが今こそ新たな歴史の扉を開く。

◇「必ず優勝」夢じゃない 浦学21年ぶり4強にアルプス興奮

 やったぞ、21年ぶりのベスト4進出―。31日、第85回選抜高校野球大会準々決勝で浦和学院北照(北海道)に10−0で大勝。三塁側のアルプススタンドはナインの活躍に、歓声が鳴りやむことはなかった。

 昨春、夏の甲子園ではいずれも3戦目に敗れている。その3戦目を迎え、スタンドの気合はいつも以上。生徒会長の天久甲太郎さん(3年)は「野球部は学校の顔。接戦で勝ってもらいたい」と意気込む。

 食事作りのサポートや練習試合のアナウンス、スコアの集計など、一番近くで日々、奮闘するナインの姿を見ているのが、野球部の女子マネジャーだ。小泉由梨恵さん(3年)は「私たちも選手と同じ気持ちで戦っている。必ず優勝したい。夢じゃなく実現させたい」。真鍋美香さん(3年)も「本当に選手たちは毎日頑張っている。私たちの気持ちが選手に届くように応援します」。共に力を込め、グラウンドに視線を向ける。

 山形中央との3回戦で本塁打を放った高田涼太三塁手の父昭人さん(48)は、勤務先の昼休みにつけたテレビで息子のアーチを見たという。「心の中で『よしっ』と思いましたが、きょうもホームランは狙わずフルスイング、全力疾走など、できるプレーを確実に」と期待を寄せる。

 父の控えめな願いは、再び大きな結果となって表れた。一回2死一塁から、この日も4番を担う高田選手の左翼スタンドに突き刺さる2ランで先制。これで2戦連発。五回には2番贄(にえ)隼斗二塁手の右中間への三塁打と敵失で2点を追加。七回にも3番山根佑太中堅手の走者一掃の二塁打などで6点を加えた。投げても小島和哉投手から山口瑠偉投手への完封リレーで北照打線を1安打に抑えた。

 投打がかみ合っての完勝で、森士(おさむ)監督が就任1年目だった1992年以来、21年ぶりのベスト4をつかみ取った。3安打3打点と大活躍した山根主将の母詠子さん(46)は「チームが勝てて、すごくうれしいです」とにっこり。初の決勝進出を懸ける相手は、昨春の1回戦で快勝している敦賀気比(福井)なだけに「すごい勢いでくると思うので、それに負けないもっと強い気持ちで戦って」と思いを込めていた。

埼玉新聞

◇児童手製のお守り

 浦和学院の選手たちはユニホーム形のお守りを携えて甲子園を戦っている。東日本大震災後に用具支援などを行った宮城県石巻市の少年野球チーム「鹿妻・子鹿クラブ」の小学生約30人が「甲子園でも頑張って」という思いを込めて手作りしてくれた。「めざせ日本の頂点」「最高の仲間を信じて」など、それぞれ違うメッセージが書かれた“一点物”。佐々木昂太選手(3年)は「みんなの思いを胸に、チーム一丸頑張ります」。

石巻からも応援

 東日本大震災の被災地支援活動を行っている浦和学院ナインを応援しようと、宮城県石巻市から1組の家族連れがスタンドに駆けつけた。同市内の保育所で選手たちとラジオ体操をして遊んだという伊東亮祐ちゃん(5)は「お兄ちゃんたちは大きくてかっこよかった。また遊んでほしい」。選手たちの案内役を務めた父の孝浩さん(43)は「浦和学院のみんなには感謝の気持ちでいっぱい。甲子園での活躍にまた勇気づけられました」。

◇「一戦必勝」でフルスイング 浦和学院3年・高田涼太選手

 試合前、一回の攻撃が鍵を握ると考えていた。

 その一回裏、打席が回ってきた。「低い打球でつなぐバッティングを意識した」。フルスイングで真ん中の直球を捉えると、打球はきれいな放物線を描いて左翼席に吸い込まれた。「小島が思い切り投げられるようにしたかった」。後輩への思いが、貴重な先制打につながった。

 3人兄弟の次男。父昭人さん(48)は「中学時代は、何の実績もない無名の選手だった」と振り返る。しかし浦学入学後、才能が一気に開花する。高い打力と守備力が評価され、昨夏の甲子園に出場。新チームでは、4番に抜てきされた。

 2試合連続の本塁打となったが、打撃内容に決して満足していない。2打席目以降、ノーヒットに終わったからだ。「変化球の見極めはまだまだ」と気を引き締める。

 目標の日本一まであと二つだが、気負いはない。「『一戦必勝』で、目の前の試合を戦っていきたい」

毎日新聞埼玉版)