浦学完封、4年ぶり優勝 11回目夏の甲子園

 第94回全国高校野球選手権埼玉大会(県高野連など主催)は28日、さいたま市大宮区の県営大宮球場で決勝があり、浦和学院が終盤に聖望学園を突き放して4−0で快勝、4年ぶり11回目の優勝を果たした。157チーム3007人が参加した今大会の頂点に立った浦和学院は、春夏連続の甲子園出場となった。

◇聖望、あと1本出ず

 浦和学院が終盤に聖望学園を突き放した。1点リードで迎えた七回、山根の左越え2点適時二塁打など3安打を集中して3点を追加し、試合を決めた。投げては佐藤が三塁を踏ませず、被安打3の完封勝利。聖望学園は三回に連打で好機を広げたがあと1本が出なかった。

◇「殻を破れ」に選手呼応

 試合が動いたのは、浦和学院が1点リードで迎えた七回表。この回の攻撃前に浦学ナインは円陣を組んだ。「弱いままの自分たちでいいのか。殻を破れ」。森士監督が、初回に1点を先制したものの好機を生かせずにいた選手たちを鼓舞した。

 選手たちが監督の思いに応える。2死二塁。打席には準決勝で決勝打を放った林崎龍也捕手(3年)。「この回で良くも悪くも流れが変わる。絶対1点をもぎ取ってやる」。応援席がチームカラーの赤いメガホンで大きく揺れる。声援を背に低めの球を左前にはじき返し、走者の石橋司選手(3年)を還した。林崎捕手の母美紀さん(38)は「打ってくれると思った」と大喜び。

 続く佐藤拓也投手(3年)は敬遠され、なお2死一、二塁。山根佑太選手(2年)の左越え二塁打でさらに2点を加えると、母詠子さん(45)は「今夏で一番良い仕事」とたたえた。

 聖望学園小林健斗主将(3年)は「投手も捕手も余裕が無かった。相手はそれを逃さなかった」と悔しがった。

 最終回、最後の打者を投前ゴロで打ち取った佐藤投手は一塁手の明石飛真主将(3年)に送球し、仲間たちと固く抱き合った。佐藤投手は「ボールが先行するなど制球が課題。林崎が配球を組み立ててくれたおかげで投げきることができた」と女房役に感謝。明石主将は「日本一をとって優勝旗を持ち帰る」と決意を語った。

◇OB7人がエール

 聖望学園の応援席では08年のセンバツで準優勝した野球部OB7人が後輩たちにエールを送った。遊撃手だった小名木弘毅さん(21)は「夏は初戦敗退してしまったので、今度はぜひ甲子園に行ってほしい」。二塁手を務めた高山拓海さん(21)は「後輩たちのおかげで懐かしい仲間と再会できた。甲子園の経験は誇り。後輩たちにも勝って甲子園を経験してもらいたい」と応援していた。

◇最後の夏を完全燃焼 聖望学園小林健斗主将(3年)

 4点を追う最終回、先頭で打順が回ってきた。左打席に入る直前、一塁側の浦和学院ベンチから自分を呼ぶ声が聞こえ、ほほ笑み返した。開会式で「絶対に決勝でやろうな」と約束した浦学の西岡伸朗選手(3年)の声だった。

 「浦学とは最後に戦う運命だったのかな」と思う。昨秋の県大会準決勝で九回1死から逆転負けを喫した。甲子園に行くために倒さなければならない相手であり、最大のライバルだった。

 打席に立つと、球場に響く吹奏楽のボリュームが最高潮に達していた。最高の舞台。相手投手との最後の対戦を楽しもうと思った。見逃し三振に終わったが、悔いはない。

 小3の時、いとこがいた聖望学園夏の甲子園で8強入りしたのを見て、この学校で甲子園に行こうと思った。夢はかなわなかったが、涙は流さなかった。「浦学に甲子園で絶対勝ってくれと伝えようと思ったから」。最後の夏を完全燃焼し、ライバルにエールを送った。

◇課題を克服したい 浦和学院森士監督

 我慢比べの接戦だったが、選手が七回に開き直り積極的な打撃ができた。甲子園までに下位打線の強化など課題を克服したい。

◇選手よく頑張った 聖望学園・大越仁監督

 浦和学院は強かった。佐藤君を打ち崩すことができなかったのが敗因。低めに良い球がきていた。選手はよく頑張った。

毎日新聞埼玉版)