最高の応援 夏Vに歓喜 高校野球決勝

 春夏連続を狙う浦和学院か、3年ぶりの栄冠を目指す聖望学園か−。28日、県営大宮球場で行われた第94回全国高校野球選手権埼玉大会決勝。最後の試合で最高の試合をしようと、グラウンドで懸命のプレーを続ける選手たち。それを後押ししたのは、スタンドから声援を送る両校の応援団。「応援で勝たせたい」「力の限り応援する」。選手たちに向けた必死のエールは、最後まで途切れなかった。

◇甲子園でも勇気を 浦和学院

 春夏連続の甲子園出場を目指す浦和学院。夏の大会の決勝進出は4年ぶりで、一塁側スタンドの夢舞台へ懸ける思いは強い。

 応援団長で野球部3年の西尾太志君(17)は「2年4カ月の練習の証しを見せてもらえれば。応援で勝たせたい」と力強く意気込む。野球部OBの高田祐次さん(30)は「要所に好プレーをみせる林崎君に期待する」とチームを引っ張る後輩の活躍を願った。

 浦和学院は一回、先頭打者の竹村春樹選手の二塁打を皮切りに先制。幸先良いスタートにスタンドは活気づく。竹村選手の父親の達矢さん(49)は「欲しかった先制点。これでリラックスしてもらえれば」とほっとした様子。その後は投手戦が続き、応援席はチャンスやピンチに一喜一憂した。

 1点を争う展開だったが、七回に林崎龍也選手と山根佑太選手のタイムリーヒットが飛び出すと、たまっていたうっぷんを晴らすようにスタンドは大歓声に包まれた。

 試合終了が近づくと、勝利の瞬間を固唾(かたず)をのんで見守った。最後の打者をピッチャーゴロに打ち取ると、みんな抱き合って喜びを爆発させた。

 チアリーディング部長で3年の杉本優さん(17)は「夢だった甲子園での応援がまたできる」と笑顔。投打に大活躍した佐藤拓也投手の母親の馨さん(47)は「みんなの応援が勇気になったと思う。何度も悔しい経験をして、体も気持ちも大きくなった」と息子の成長ぶりに思わず涙ぐんだ。

 父母会会長の緑川美博さん(44)は「深紅の大優勝旗を持ち帰ってほしい」と甲子園での活躍を期待していた。

◇選手の健闘に拍手 聖望学園

 聖望学園の三塁側スタンドは、チームカラーの青色のメガホンを持った父母会や生徒らがエールを送った。

 応援を盛り上げる演奏に、サンバのリズムも流れる。オーストラリアからの留学生コートニー・エロックさん(18)は「オーストラリアの野球は人気がない。日本の野球はとっても楽しい」と友人とともにメガホンを振った。

 今年初めて、音楽部の卒業生もスタンドで応援した。きっかけは5月に、音楽部の元顧問の古希を祝う卒業生演奏会を開催したこと。高校2年の時に甲子園でも演奏した音楽部卒業生で明治大学2年の茂木紀之さん(19)は「また甲子園に行きたい」と後輩のためにスタンドを盛り上げる。

 試合は一回に1点を先制され、なかなか点が入らない苦しい展開。音楽部3年の上田純さん(17)は「取り返してくれると信じている」と音楽部で最も重いスーザフォンを吹いて応援した。七回には3点を許したが、スタンドからは「まだ七回。諦めるな」と声が飛び交った。

 音楽部3年で前部長の大竹芹奈さん(17)は「苦しいけど、力の限り応援したい」と汗を流す。野球部で応援団長の真下祐太君(18)は「昨年の秋に負けているので、絶対に勝ってほしい」と最後まで応援を続けた。

 敗戦が決まると、スタンドは静まり返り、呆然と立ち尽くす人たち。だが、どこからともなく拍手が湧き起こり、「よくやった」と選手の健闘をたたえる声が聞かれた。

埼玉新聞