猛攻断ち切る好守 聖望学園・田浦諒二選手

 1点差で食らいついてきた聖望学園が、追い詰められていた。佐藤拓也投手(3年)を打ち崩せないまま迎えた7回表の守備。ここで追加点を奪われると厳しい。中堅手として最後方からチームを見渡す田浦諒二選手(同)の目に、仲間たちがいつもより少しだけ元気がないように映った。

 「いつも通りやろう! もっと、しゃべろう!」

 開会式の前日、打撃練習中に右脇腹が肉離れした。大舞台を目の前にした突然の故障。不安でいっぱいだったが、仲間たちに「勝ち上がって試合に出してくれよ」と気丈に話した。言葉通り、チームはノーシードから勝ち続けた。完治していなかったが、準決勝からは痛みを押してフル出場した。

 「どんな打球が来ても、絶対に捕ってやる」。胸の内に闘志を燃やす。1死二塁、まずは竹村春樹選手(2年)の浅い飛球に飛びついて好捕。直後に長短打で3点を追加されたが、高田涼太選手(同)の打球が再び目の前に飛ぶと、無我夢中でダッシュした。痛みは感じなかった。見事なスライディングキャッチの連発で相手の長い攻撃がようやく終わった。「ナイスキャッチ!」。チームは再び盛り上がった。

 浦和学院とは昨秋の県大会の準決勝で対戦し、関東大会出場を阻まれた。この日、打撃は沈黙のまま終わった。「昨秋も、今回も力負けだった。自分たちの分まで活躍してほしい」。悔しさをにじませながらも、ライバルの甲子園での奮闘に期待していた。

朝日新聞埼玉版)