復帰支えた仲間に感謝 早大本庄3年 八木信輔捕手

 「流れを変えてやる――」

 先頭打者で迎えた五回。3球目の内角高めの直球を振り抜くと、打球はきれいな放物線を描いて左翼スタンドへ吸い込まれた。四回に味方の失策で先制点を許したが、試合を振り出しに戻す貴重な一打となった。

 1年生の夏、退部届を出した。厳しい練習に耐えられなかった。髪を伸ばして合唱の部活に入部したが、野球のテレビ中継を見ると、野球が恋しくなった。寮生活での仲間との楽しかった語り合いも思い出した。

 そんな時、「もう一度練習に来いよ」。チームメートが誘ってくれた。10か月ぶりにはめたミットの感触は今も忘れられない。ブランクを埋めるため、朝夕の練習に加えて、昼休みにもバットを振った。送球や打撃フォームの修正のため、仲間の厳しい指摘も積極的に受け入れた。「一人でプレーしているんじゃない。仲間がいる」。今春にレギュラーを獲得した。バッテリーを組んだ出田興史投手(3年)は「ひたむきなやつ。今はムードメーカー」と慕う。

 試合は1点差で敗れ、高校野球は終わりを告げた。しかし、プレーできる喜びを知った3年間だった。

 「一度は離れた自分を受け入れてくれたチームに本当に感謝している」

(読売新聞埼玉版)