本庄一、逆転サヨナラ 浦和北−松山、流れ決めたリタッチ

(17日・県営大宮ほか)

 第7日は6球場で3回戦の残り16試合が行われ、4回戦に進出する32校が決まった。

 昨年王者の本庄一は3点を追う九回に4点を奪い、深谷一に6―5で逆転サヨナラ勝ち。Dシード埼玉栄は栄北を3―2のサヨナラで下した。川越東はDシード大宮西に8―1で七回コールド勝ち。浦和北は松山に8―5で逆転勝ちした。

 シード校はBシード浦和実、Cシード大宮東、市川越、Dシード浦和学院がコールド勝ち。Dシード鷲宮東農大三を4―0で破った。

 第8日は18日、県営大宮など3球場で、4回戦16試合のうち8試合が行われる。

◇攻めの一球、裏目死球 深谷

 安打で出塁した柳田、設楽。これを返した三塁打の田村。そしてサヨナラ犠飛を放った岡野。3点を追う九回裏、追い詰められた昨夏の王者に火を付けたのは、「これで最後かもしれない」という3年生の強い気持ちだった。

 7番柳田の安打からサヨナラ劇は始まった。1死となったが、設楽の中打と沢田の死球で1死満塁。「とにかく安打で後につなごう」。外角高めの直球を打ち返した田村の打球は右中間を真っ二つに切り裂いた。走者一掃で同点。続く岡野は「絶対打ってやろう」。気持ちが乗った打球はセンターへ舞い上がり、田村が歓喜のホームを踏んだ。

 「深谷一の投球は、スライダーやカーブの強弱を付けていた。中途半端に打ってもだめ。勝とうと意気込むと力が入ってしまう」と老練な須長監督。あえてベンチの雰囲気を「盛り下げた」という。選手の肩から力が抜けた。「負けられない」。3年生はその一心。食らい付き、バットを振り切った。

 2回戦も逆転。昨夏の王者は、観客に手に汗握らせる戦いを心得ているようだ。

  ◇ ◇

 昨夏の優勝校相手に、打者の胸ぐらを強気の直球でえぐり続けたエース渡辺。試合後、「終わった感じがしない」と涙を拭う姿に悔いはなかった。

 3点リードで迎えた九回裏。あと三つのアウトで大魚を仕留められる。そのはずだった。しかし、最悪のケースが現実となった。満塁の走者を三塁打で一掃され、犠飛であっという間のサヨナラ。村川監督は「選手はよく頑張った。野球は怖い」と、本庄一の底力に賛辞を贈るしかなかった。

 攻めの姿勢が招いた結果でもあった。村川監督が勝敗の鍵に挙げた場面は、九回1死一、二塁で1番沢田に与えた死球。捕手の高橋は「ホームに覆いかぶさってくる打者の内側を大胆に攻め、外のスライダーで勝負するのが渡辺」。再三のピンチに真価を発揮したこの一球こそが、本庄一を九回1死まで追い詰めた生命線でもあった。渡辺は「九回も内側を攻めた。三塁打は結果的に甘く入ったけど、力は出し切った」。

 あと一歩で勝利を逃したナインだが、表情は明るかった。六回に2点勝ち越し打の北村は「すがすがしい」とにっこり。「3年間の成果が全部出た。みんな頼もしかった」。原口主将の言葉に、力を出し切った者の充実感が漂った。

◇今川、無欲の2打席連発 大宮東

 大会屈指の強打者のバットが火を噴いた。2打席連続の右越え本塁打を含む4打数4安打4打点の大活躍。最後の安打がコールド勝ちを決める殊勲打というおまけも付いた。

 2回戦(初戦)の深谷戦でもコールド勝ちを決めるソロホーマーを放っており、本塁打は2試合連続の3本目。

 「1本目は狙っていた変化球を強くたたいただけ。2本目はインコースの真っすぐ。つまったけどたまたま入った」と冷静に振り返る。

 冬場のウエートトレーニングで筋力がつき、飛距離が増した。食事は丼で山盛り2杯。吉本監督は「暑い夏を乗り切れるだけの体力とスタミナが増した。選球眼も素晴らしい」と教え子の成長ぶりをたたえる。

 しかし本人はいたって謙虚。ホームランにも執着していない。「(コールドを決めて)ピッチャーに疲労がたまらないよう早めに終わらせてあげたかった。ヒットの延長がホームラン。チームが勝てたので満足です」。

 無欲のスラッガーから目が離せなくなりそうだ。

◇流れ決めたリタッチ 浦和北

 野球は「流れ」が大きく勝負を左右する。浦和北ナインのピンチにも動じない冷静な判断力が接戦での勝利をたぐり寄せた。

 山崎監督は、「まさしくピンチの後にチャンスあり。よく挽回してくれた」と興奮冷めやらぬ様子だった。

 一つのプレーが勝敗を分けた。3−5の七回裏、松山は1死二、三塁で金子章がライトへ大飛球を放つ。二塁走者が飛び出し、三塁走者は本塁へ。浦和北の内野陣はリタッチの早かった三塁へ送球、併殺に仕留めて得点を与えなかった。

 普段から走者を置いた攻撃練習で行っているプレーを重圧のかかる場面で守備に置き換え、見事に併殺を完成させたのだ。主将の島田は「練習通り。あの場面は大きかった」と胸を張った。

 これで勝利の女神は浦和北にほほ笑みかけた。八回表、四球を皮切りに島田の左前打で1点差。なおも2死満塁から4番松尾が「ここで決めるしかない」とフルカウントから直球を中前にはじき返し逆転した。その後も敵失なども絡み、この回、一挙5点で試合が決まった。

  ◇ ◇

 1点を追う六回に逆転したが、八回に再逆転された。粘り強く、シーソーゲームを展開していただけに、滝島監督は「七回の走塁ミスが痛かった」と肩を落とす。

 五回に1点を奪われたが、六回裏で5連打を放ち5−3とこの試合初めてリードした。チームの雰囲気は最高潮となり、試合は決まったかのように見えた。

 だが七回裏、1死二、三塁、「フェンスを越えるかと思ったけど風で戻された」と振り返る金子章の右翼への大飛球に、三塁ランナー斎藤が早めに飛び出してしまい、リタッチで併殺に終わった。

 追加点を奪える絶好の機会だっただけに、滝島監督は「気持ちが前に行ってしまったんだろう」と悔やむ。

 これが流れを変えた。八、九回に快音が響くことはなかった。エース野沢は「後輩に期待したい」と涙をこぼした。

埼玉新聞