いじめで県大会辞退 髪の毛に火、失神ゲーム 鷲宮高野球部

 
 県立鷲宮高校(岩崎祐一校長、久喜市中妻)が、野球部内でいじめや暴力行為があったとして、24日開幕の春季県高校野球大会の出場辞退を県高野連に申し入れ、了承されたことが、22日分かった。同校は1995年の第67回選抜高校野球大会で甲子園出場経験もある高校野球界の名門校。埼玉新聞社の取材に対し岩崎校長は「誠に残念なこと。今後、こうしたことが二度と起きないよう、生徒への指導を徹底したい」と述べた。

 学校の調べによると、野球部内のいじめなどが発生したのは昨年12月から今年4月初旬にかけて。

 現在3年生の生徒3、4人が現在2年生の生徒5人ほどに対し、▽バットを投げ付けて脚に打撲を負わす▽鼻の穴に芝生を詰め込み、鼻血を出させる▽コールドスプレーをかけ、ライターで火を付けて髪の毛を燃やす▽顔にテープを巻き付けてベースランニングをさせる▽スパイクで足を踏む▽胸を殴る▽土の塊を投げる▽過呼吸にさせる失神ゲームをさせる−などの行為が行われていたという。

 今月14日、被害を受けた一人の生徒の保護者が学校を訪れ、学校側はいじめが発生していたことを初めて知った。その後、全野球部員にアンケートを行い、一人一人と面談し、19日までにいじめの全容を確認。翌20日、高野連に県大会出場の辞退を報告した。

 同校は事態の重大性をあらためて確認。県大会出場辞退のほかに、(1)5月末までの対外試合の自粛(2)4月末までの練習自粛(3)いじめの加害者となった生徒の自宅謹慎−を決めた。

 今年4月から野球部新監督となった柿原実教諭は「被害者には本当に申し訳なく、悲しい気持ち。『いい選手である前に、いい人間であるべき』と日ごろから生徒たちに話している。いじめをした生徒も十分反省している。今後、再発防止に向けて指導したい」と話している。

 同校は23日午後、野球部の保護者を対象にした説明会を開く。

◇出場停止処分も

 県高野連は、鷲宮高の出場辞退による対応に追われた。いじめや暴力行為があったとの報告が初めてあったのは、春季県高校野球大会の組み合わせ抽選会が行われた20日。抽選会終了後に、鷲宮高側から口頭で連絡を受けた。翌21日に正式な報告書が提出され、辞退の申し入れがあったため、受理した。

 今後は報告書を日本高野連に提出し、審議委員会を経て処分が下される。処分は厳重注意で済む場合もあるが、重ければ大会の出場停止などが科されることもある。

 鷲宮高は16日までに東部地区大会で2試合を行い、県大会の代表権を獲得していた。辞退により、出場1枠と26日に県営大宮球場で予定されていた県大会初戦の2回戦は鷲宮高の棄権による不戦敗として扱われて無効になる。だが、今大会は代表校の参加必須が義務付けられていないため、代替出場校は出さない。県高野連の高間薫理事長は「抽選会の前なら対応できるが、終わった後なので、どうしようもない」と頭を抱えた。

埼玉新聞