新たな仲間に感謝 川越初雁の松坂選手

 勝利の瞬間、ベンチの仲間たちと抱き合って喜んだ。勝利を決める一打を放った川越初雁の3年生松坂賢選手は、1年の冬に青森の高校から編入してきた転校生。新天地で出会った仲間とともに、甲子園を目指して戦い続けている。

 松坂選手は神奈川県出身。中学時代は地元のボーイズリーグでプレーし、高校進学の際には「甲子園に行きたい」と青森の名門・光星学院の門をたたいた。

 だが、描いていた理想は、すぐに崩れ去った。入学当初から先輩に厳しく指導され、チームに溶け込めず、同級生たちとの関係もギクシャクするように。とても野球をする環境にはなれず、1年生の11月に退学をした。

 転校先を探している際に声を掛けてきたのが、ボーイズリーグ時代に知り合った東福寺進吾選手だった。東福寺選手は当時、中学3年生。川越初雁への進学を決めていた。「先輩、一緒に野球をやりましょう」。その一言で、松坂選手は同校への編入を決意。父と兄を神奈川に残し、母とともにふじみ野市に移り住んで、同校に通うようになった。

 「青森時代のこともあり、チームに溶け込めるか不安だった」。そんな転校生を温かく迎え入れたチームメート。今大会では、東福寺選手が「松坂さんのためにも」と1回戦でサヨナラ適時打を放ち、チームを、そして松坂選手を盛り上げた。

 かつてのチームメートたちは、現在「優勝候補」として各メディアに取り上げられ、青森県大会を順当に勝ち進んでいる。松坂選手も編入しなければ、そこにいたかもしれない。だが、埼玉で出会った仲間、頼りになる後輩、全国屈指の参加校数の中から甲子園を目指す夏・・・。どれも松坂選手にとっては、かけがえのないものだ。

 「自分が打てない時も支えてくれた。この仲間とともに甲子園に出場し、光星学院と戦いたい」。青森からの転校生は、野球ができる喜びをかみしめながら「旧友」との再会を夢見て、これからも打席に向かう。

埼玉新聞