全力貫き「よくやった」 浦学敗退も選手に拍手

 スクールカラーの真っ赤なスタンドが3度、歓喜に包まれることはなかった−。19日、第94回全国高校野球選手権大会3回戦で浦和学院は天理(奈良)に2−6で敗れ、準々決勝進出を逃した。それでも最後まで全力プレーを貫いた選手たちに、詰め掛けた約700人からは惜しみない拍手が送られた。

 浦和学院応援団が、陣取る三塁側アルプススタンド。地元・関西の天理に、応援の数では劣るが熱気や思いの強さでは負けてない。

 ひと際目立つ紺色のユニホームを着てグラウンドに声援を送るのは、山根佑太左翼手が中学時代に所属していた広島県硬式野球チーム・ヤングひろしま。大型バス1台で広島を午前6時に出発し、選手ら47人が駆け付けた。現在の山根選手と同じように2年生で4番を担う石谷哲也選手(13)は「優しい先輩で尊敬してます。チャンスで打ってほしい」と期待を込めた。

 試合は一回に1点を先制されたが二回。山根選手の中前打を皮切りに明石飛真一塁手スクイズで同点とした。

 かつての教え子の活躍を見守る姿も。朝霞三中時代の高田涼太三塁手を指導した同中の神崎創造監督(32)はこの日の朝の新幹線で甲子園に乗り込んだ。高田選手が中学を卒業する時、神崎監督に「先生の教え子で初の甲子園球児になります」と書かれた手紙を渡したという。まさしく有言実行の高田選手に「夢のようです。野球に対して熱い男。いつも通り声を出して引っ張って」と笑顔を見せる。

 恩師の願いが通じたのか1−4の四回。2死走者なしからその高田選手の左翼スタンドに飛び込む一発で2点差。試合はまだまだ分からない。

 だが五回に2点を失い2−6とされ、そのまま最終回に突入した。2死二塁で森戸佑樹二塁手の打球は二塁手のグラブに収まりゲームセット。それでも一瞬、スタンドを覆った静寂は、ナインが最後のあいさつで目の前に来ると、「よくやったぞ」という全力プレーをたたえる歓声と惜しみない拍手へと変わった。

 チームを常に大声で鼓舞してきた明石飛真主将。その父・守弘さん(41)も「『3年間ご苦労さま』と言いたい。埼玉には胸を張って帰ってきてほしい」とねぎらった。

埼玉新聞