4強決定、27日準決勝 高校野球埼玉大会

 (25日・県営大宮ほか)

 第10日は準々決勝4試合が行われ、浦和学院、川口、春日部共栄聖望学園がベスト4に入った。

 Bシード川口は、2代表制のBブロックだった1966年以来、46年ぶり6度目の4強進出に名乗り。1―1の五回、丸山の中越二塁打で勝ち越すと、エース高窪は再三、走者を背負いながらも、粘りの投球で昌平を1失点完投。八回2死二塁では一塁手小林の好守備で同点のピンチを救うなどバックももり立てた。

 昨年準優勝のCシード春日部共栄は、九回に村山の右中間への適時打で熊谷商に5―4でサヨナラ勝ちし、2年連続12度目のベスト4入り。熊谷商は、一回に小野が満塁ホーマーを放つなど健闘が光った。

 春夏連続甲子園出場を狙うCシード浦和学院は、連覇を狙った花咲徳栄を2―1で振り切り、3年連続19度目の4強入りを決めた。

 聖望学園は3年ぶり9度目の4強進出。九回に2点差を追い付き、小林健二塁打でDシード狭山ケ丘に逆転サヨナラ勝ちした。

 休養日を1日挟み、準決勝は27日、県営大宮で浦和学院―川口(10時)春日部共栄聖望学園(12時30分)のカードで行われる。

埼玉新聞

◇自分の力出せた

 春日部共栄にサヨナラ負けした熊谷商。全試合で登板したエースの川崎勇太投手(3年)は「疲労で力み、制球が乱れた。でも自分の力を出せた」と満足感を漂わせた。熊谷商は、10年夏の優勝校の本庄一や春季県大会4強の春日部東など強豪校を次々と撃破。この日も春日部共栄を最後まで苦しめた。初回に公式戦初となる満塁本塁打を放った小野将輝選手(3年)も「チーム一丸で戦えて良かった」と話した。

毎日新聞埼玉版)

◇好カードで球場大入り 花咲徳栄浦和学院

 県営大宮の第1試合は、昨夏を制した花咲徳栄と、今春の選抜高校野球大会ベスト8の浦和学院という強豪校同士による昨夏の準決勝の再現という好カード。平日にもかかわらず、内野一般席はほぼ満席になった。

 入場券売り場は長い列ができ、高野連関係者は「有料入場者だけで約4千人は入ったのでは」と驚いた表情。試合中は通路に座り込まないように協力を求める場内アナウンスが繰り返し流れていた。

◇生徒1500人の応援 外野席まで拡大 昌平

 昌平は生徒約1500人が応援に駆けつけた。スタンドだけでは入りきらず、外野席まで埋まった。

 「かっ飛ばせー、昌平!」。野球部員の振り付けに合わせ、跳びはねたり赤や緑のメガホンを頭上でぐるぐる回したりしながら、大きな声援を送った。

 試合は負けたが、青木瑞穂さん(3年)は「逆転できると信じ続けて応援した」と話し、右翼手の岩立一輝選手(3年)は「攻撃から守備に戻った時、『ナイスバッティング!』と言われてうれしかった。ありがたかった」。

◇9回2死「力まずに」村山雄麿選手

 9回裏2死二、三塁、春日部共栄の村山雄磨選手(3年)が内角への直球を振り抜くと、打球は右中間をゆっくりと抜けた。一塁を踏んで振り返ると、本塁で歓喜の輪をつくっている仲間が見えた。

 1回に満塁本塁打を浴び、苦しい展開。4、5回戦でも好機に適時打が少なかった選手たちに、本多利治監督は5回、「力むな。練習試合のつもりで振れ」とアドバイスした。選手の動きは少し滑らかになったが、それでも7回に併殺に遭い、9回も無死満塁から併殺になるなど、嫌なムードが漂っていた。打席はその直後。監督の言葉通り、力まず振り抜いたのが、値千金のサヨナラ打になった。

 春までは2番。「バントが下手」(本多監督)という理由で7番になったが、「チャンスに回ってくることが多く、うれしい」。この日は4安打。「もっともっと野球を楽しみたい」と笑顔をみせた。

◇マメつぶれても気迫の投球 昌平・斉藤誠投手(3年)

 「自分が出れば、逆転できる」。9回2死、もう後がない場面でも、打席に立った昌平のエース、斉藤誠投手(3年)は笑顔を絶やさなかった。しかし、打ち上げた打球が力なく川口の三浦康太中堅手(同)のグラブに収まると、涙があふれ、止まらない。仲間に抱きかかえられて、あいさつの列に加わった。

 気迫でマウンドを守りきっていた。初回、いきなり中指のマメがつぶれるアクシデント。「エースとして、相手より先にマウンドを降りるわけにはいかない」と、接着剤などで応急処置を繰り返しながら投げ続けた。それでも、最後まで球威は落ちなかった。

 強い気持ちを支えた理由はもう一つあった。川口は昨夏の3回戦で、サヨナラ負けを喫した相手。その時、斉藤投手はベンチで試合を見ていた。「あの悔しい思いをぶつけたい」。6回以降は三塁を踏ませない好投で、味方の逆転を待ち続けた。

 昨夏と同じ1点差の敗戦。雪辱は果たせなかった。試合後、好勝負を演じた相手のもとへ仲間とともに向かった。「昌平の夢は川口に託す。絶対に甲子園に行ってくれ」

◇全身からプレーできる喜び 川口・小林晴人選手(3年)

 守りを終えてベンチに戻る川口のメンバーのなかで、小林晴人選手(3年)の姿がひときわ目を引く。

 「ヨッシャー、ヨッシャー」。誰よりも大きな声で95キロの巨体を揺らしながら、笑顔で走ってくる。「楽しむ」がモットーのチームで、鈴木将史監督も認めるムードメーカーだ。

 この日は、雰囲気づくりだけでなく、攻守でもチームを引っ張った。1回、2死一、二塁から昌平のエース斉藤誠投手(3年)の決め球のスライダーを中前にはじき返し、先制点を挙げた。「追い込まれて、思わず手が出た。うまく飛んでくれた」

 守りでは、8回、2死二塁、抜ければ同点に追いつかれる場面で、一、二塁間の強烈なゴロを飛びつき好捕。ピンチを救った。9回の守りに向かう際は、気負いすぎたのか走っている最中に帽子が脱げ落ち、仲間の笑いを誘った。

 3年生になって最初の練習試合で肉離れを起こし、春の県大会は代打だけの出場。悔しい思いをしたからこそ、プレーできる喜びが全身からにじみでているように映る。

 「ここまで来たら、絶対に勝ちたい」。試合後も、とびきりの笑顔だった。

◇つないでくれた 試合決める一打 聖望学園・小林主将

 鋭いスイングからはじき出された打球が右中間で弾んだ。躍り上がってホームを踏む二塁走者。聖望学園、サヨナラ勝ち。小林健斗主将(3年)の目からうれし涙がこぼれ落ちた。

 汗をぬぐいながら、「みんながつないでくれた好機。決めてやろうと打席に入った」と振り返った。

 安打は出るが、あと1本が続かない。丹念にコーナーを突く狭山ケ丘の先発・斉藤峻投手(1年)を打ちあぐねていた。エースの川畑諒太投手(2年)を援護できないまま、逆に終盤、相手打線に捕まった。

 2点をリードされて迎えた9回裏の攻撃前。泣き出す選手がいた。

 「泣くなっ。大丈夫だ。ここを乗り越えるぞ!」

 ベンチに小林主将の大声が響いた。「よーし、行こう」「返すぞー」。選手たちに明るさが戻った。これで息を吹き返したかのように、チームはこの回、安打や犠打、暴投などで同点に追いつく。最後は小林主将がきっちり役割を果たした。

 「みんなに『泣くな』と言っておいて、試合後は自分が泣いてしまった。でも、まだ次がある」。涙はすぐに乾いた。頭の中は準決勝のことしかない。

◇一人じゃない 気合入れ直す 浦和学院佐藤拓也投手(3年)

 9回表の浦和学院の守り。花咲徳栄に短長打で1点差に迫られた。浦和学院にとってこの夏、初の失点だ。2死ながら走者が三塁に残っている。これまで走者を出しても要所を抑えてきたマウンドの佐藤拓也投手(3年)の顔が初めてくもった。それを見た捕手の林崎龍也捕手(3年)ら内野陣が次々に声をかけた。

 「俺たちが守ってやる。裏もあるし、同点でもオッケーだぞ」

 このかけ声で気持ちが落ち着いた。「1人じゃない。バックには仲間がいるんだ。ハッと気づいて、気合を入れ直せた」

 押せ押せの相手に対し、決め球に投げ込んだのは得意のツーシーム。「この試合で一番、いいところにいった」と低めを突き、内野ゴロに仕留めた。

 昨夏の準決勝。8回にリリーフで登板したが1失点。花咲徳栄の選手たちが歓喜する瞬間を目の当たりにした。

 「去年は自分が抑えていれば展開が違った。あの時の3年生の思いを背負って戦う。強いチームに逃げ腰ではだめだ」。試合前に自分を奮い立たせ、初回から大胆に内角を攻めた。

 気持ちのこもった投球で、8回まで強力打線を散発3安打に抑える好投。佐藤投手の思いに応えるように、林崎捕手が好送球でタッチアップの走者を刺すなど、バックも再三の好プレーでもり立ててくれた。

 「立ち上がりは制球が悪かったが、徐々にテンポがよくなった。次も自分の投球をしたい」。頂点へ、一歩ずつ近づいている。

朝日新聞埼玉版)