裏方の汗 勝負支える 上尾・グランドマネジャー吉田龍人君

 埼玉大会は5回戦までが終わった。敗れ去った149チームも、甲子園を目指して激突する8強も、伸び伸びプレーしてきた。そんな選手たちを支えているのは、マネジャーや学生コーチら裏方だ。チームのため、サポートに全力を注いだ彼らも輝いていた。

◇部員100人 声かけ指導

 伝統ある古豪・上尾。部員約100人の大所帯の世話をするのが吉田龍人君(3年)だ。

 「笛を吹いてくれないか」。昨夏、高野和樹監督からグランドマネジャーへの誘いを受けた。体を鍛え、技を磨き、白球を追いかけるのではない。準備体操などで笛を吹いて、選手全員に目を行き渡らせるのが役目だ。

 戸惑い、悔しさが交錯した。選手として甲子園を目指したかった。1週間、高野監督に返事が出せなかったが、信頼を寄せられている証しだと思い直した。

 早朝練習にはしばしば仲間より早く来て、道具の準備をする。合同練習が終わったあとの自主練習にも付き合う。バッティングマシンに球を込め、箱の球がなくなると、腰をかがめて集めて回る。すべての練習が終わるのは、連日午後9時を過ぎる。

 練習中は選手一人ひとりの動きに目を凝らす。健康面や技術面で調子を落としていそうな選手には声をかけ、一緒に原因を探る。動きが緩慢だったり、集中力を欠いたりしていれば、友だち意識を消し、あえて厳しく注意する。甘えはない。

 今大会では記録員としてベンチ入りした。スコアを付けながら、グラウンドを駆け回る仲間に必死で活を入れた。「できるだけ仲間の力になることがしたい。僕には、それだけで十分だ」

朝日新聞埼玉版)