「気持ちは一つ」励まし続けた 春日部東・若月和也選手

 9回2死、春日部東の若月和也選手(3年)は初球の狙っていた直球を、フルスイングした。しかし、熊谷商のエース川崎勇太投手(同)の球威は予想以上で、詰まった打球は二塁手の前に力なく転がった。懸命に頭から滑り込むがアウト。敗戦が決まった。

 185センチの長身を生かした大きなスイングと勝負強い打撃で、主将としてチームを引っ張ってきた。しかし、打線がいま一つのチームを象徴するように、打撃不振に陥っていた。

 4回戦は4番を任されたが、4打数1安打。この日は、先発を外された。試合直前に伝えられて戸惑ったが、落ち込んではいられない。中野春樹監督(59)が唱えてきたチームスローガン「気持ちは一つ」を胸に、「我慢だ、我慢だ」「1点ずつ」と、ベンチから仲間を励まし続けた。

 出番は6回。投手交代とあわせて一塁の守りについた。この回、バッテリーはスクイズを外し、松尾和弥中堅手(同)もダイビングキャッチを見せ、追い上げムードが高まった。だが、打線は相変わらず最後まで快音を響かせることはなかった。

 終了後、真っ黒になったユニホーム姿の若月選手は、ベンチやスタンドに向かい、ひときわ大きな声で「ありがとうございました」と叫んだ。一緒に引退になる中野監督を始め、支えてくれた親、仲間に向け、涙をこらえて感謝の思いを伝えた。

朝日新聞埼玉版)