終わった友との夢笑顔忘れず 春日部東・阿葉家三塁手

 春日部東が県大会4強入りした中学三年の夏、公立校の快進撃を自宅のテレビで一緒に見ていた幼なじみの辻村幸太選手(三年)が言った。「春日部東に入って、甲子園に行こう」。小学三年で野球を始めた時からの共通の夢が、明確な目標に変わった。

 茨城県古河市で、幼稚園時代から兄弟のように育った2人。県外の高校へ通う不安も、入部当初、互いに「辞めたい」と漏らすほどの厳しい練習も、「2人だから乗り越えられた」。

 昨年の秋季大会は辻村選手も二塁のレギュラーだったが、試合中に左膝靱帯(じんたい)断裂の重傷を負って戦線離脱。約4カ月のリハビリを経て復帰したが、今大会のベンチ入りはかなわなかった。

 「俺の分も頼んだぞ。おまえらしいプレーを見せてくれ」。そう託されて臨んだ今大会。この日は七回に痛烈な打球を飛びついて好捕し、逆転への機運をつないだ。「きついときこそ笑っていたい」と、ピンチでも白い歯を見せ続けた。

 「十分、よくやったよ」。試合後、辻村選手に肩をたたかれると、涙がこぼれた。「これからのことは、まだ決めてません」。2人で全力で追い掛けた10年来の夢の終わり。最後は、笑顔だった。

東京新聞埼玉版)