投手の疲労を心配し… 花咲徳栄3年・木内達也捕手

 同点で迎えた九回裏。花咲徳栄の投手橋本祐樹君(3年)は、先頭打者に対し七回以降毎回となる死球を与えた。前日に続いての先発。中指にはマメができていた。

 犠打と安打で1死一、三塁になると、捕手の木内達也君(3年)は橋本君に「リラックス。笑顔で」と声をかけた。この時、木内君の頭には満塁策がよぎったが、「疲れた橋本の投球数をこれ以上増やすのは避けたい」と勝負に出た。八回までに本庄一に打たれた8安打のうち7本が単打。木内君は「直球をちょこんと当てられている」とみて低めのスライダーで攻めることにした。

 打席に入った本庄一の谷本充君(3年)は「併殺だけは避けて次の田村につなごう」と直球を待った。1球目。真ん中低めのスライダーを見逃し。2球目の同じ球も見逃し、カウント0−2と追い込まれた。

 木内君は「試合のペースは相手がつかんでいる。急いじゃいけない」と3球目を外した。1−2からの4球目は、「ワンバウンドさせて三振」を狙った、真ん中低めのスライダーだった。「1、2球目と同じ球」。谷本君はバットをすくい上げた。「打たれたのは僕のせい」。試合後、涙があふれた木内君にナインは「いいキャッチャーだったよ」と次々に声をかけた。

毎日新聞埼玉版)