仲間を信頼し笑顔で 本庄一3年・田村和麻投手

 「負けたら明日から夏休みだ」。ロッカールームから、決勝戦直前とは思えない陽気な声が聞こえてきた。

 「田村(和麻投手)を一人にするな」というのが須長三郎監督の口癖だった。2年前、1年生ながら4番打者として甲子園の土を踏んだ。力みすぎ5打数1安打。上には上がいることを知り、「また甲子園に戻りたい」と心に誓った。

 新チームで、外野手からエースに抜てきされた。しかし今春の県大会は1回戦敗退。エースの重圧に耐えられなかったことと「1回戦なら勝てるだろう」という慢心が敗因だった。監督から「お前たちは埼玉で一番弱いチームだ」と叱咤(しった)された。弱いと自覚し謙虚になる中で「勝とうとするよりも最後まで笑顔で楽しい野球をやろう」とチームが変わっていった。県大会直前、田村君に渡された背番号は「8」。エースナンバーの重圧を減らそうという監督の配慮だった。

 4回戦を突破したとき、チームの成長を実感するようになった。余裕ができ、試合中、背中越しに「笑顔でいこうな」「打たれてもいいぞ」という仲間の声が聞こえるようになった。2年ぶりの甲子園。「投手はチームの要。仲間がいるから打たせてとるゲームを作っていきたい」と意気込んだ。

毎日新聞埼玉版)