投手転向2カ月、13個のゼロ並べたエース 春日部共栄

 内野手から転向し、本格的に投球練習をして2カ月足らずのエースが、スコアボードに13個のゼロを並べた。

 春日部共栄の鎌田恭彰(たかあき)(3年)。14回裏2死一、二塁のピンチも2ストライクまで追い込んだ。197球目。低めを狙ったスライダーは左前に運ばれた。サヨナラの走者が本塁にかえった。

 2日前の5回戦まで全4試合に登板。「仲間を信じたい」と、ただの一度も捕手・原誠一郎(同)のサインに首を振ったことはない。最後の一球もその姿勢は変わらなかった。

 今春の県大会が終わってから、センスを買われ、本多利治監督から投手転向を勧められた。だが、右ひじのけがですぐには投げられない。治るまではひたすら走り込んだ。6月初旬から、投げ込みを始め、早々とスライダーを覚えた。3回戦の川越西戦では三振を取ろうとして13安打を浴びたが、4回戦、5回戦と力まない投球を見せてきた。

 ただ、疲れはたまっていた。試合が後半になると、球の切れはなくなってきた。

 「頭が真っ白になった」と最後の場面を振り返ったが、続けてきっぱりと言った。「甘く入ったわけでもない。相手の気持ちのほうが強かった。やりきったので悔いはない」。すっきりとした表情で球場を去った。

朝日新聞埼玉版)