裏方に徹しチーム支え 富士見3年・中村貴裕君

 足でボールをうまく扱えずサッカーは苦手。体が硬く器械体操も苦手。走るのはもっと苦手。野球を始めた小学4年のころから「やせろ」「筋肉つけて体つくれ」と言われ続けた。父和久さん(45)は「小学生のころはよく半べそをかいていた」と思い返す。

 高校入学したときは体重75キロで体脂肪率は野球選手にしては高い20%。ここでも監督に肉体改造を迫られ、あんパンの買い食いをやめ一日3食を徹底した。筋トレにも精を出したが、一度もレギュラーになれなかった。

 5月、監督から「裏方としてチームを支えてくれ」と頼まれた。受け入れたが、家族には打ち明けられなかった。試合に出て活躍することが親孝行だと思っていたからだ。しかし、和久さんは「一生懸命やればいい」と励ましてくれた。

 それから、ノートに一人一人の選手の練習状況や監督からの指示をメモし、選手や監督に伝える橋渡し役となった。大会直前には「中村の分まで頑張るよ」と声を掛けてもらえるようになった。

 チームは花咲徳栄に食い下がった。「とろいけど、野球を投げ出さずに続けられた」。誇らしそうに語った。

毎日新聞埼玉版)