完投目前降板も監督期待の好投 川越東・猪岡投手

 完投目前、川越東の先発猪岡悟(3年)はあとアウト一つの場面で苦しんだ=写真。9回裏2死一、二塁。低めの直球がさえ、初回から全力でとばしてきたが、猛暑の影響でへばっていた。直球の球威も落ちている。「早く終わらせよう」。投げ急いだ球は高めに浮き、左翼線へはじき返され、降板した。

 8回に阿井英二郎監督から「完投してみるか」と言われ、「はい」と即答した。エースの高梨雄平(同)と競り合いながら、チームを引っ張ってきた。負けていられないとの思いがあった。

 「最後まで投げきらないと意味がない」という猪岡を、阿井監督は「猪岡もエース。期待通り、いつもゲームをつくってくれる」と評価した。

◇9回の二塁打、最後まで粘り 早大本庄・安達投手

 1―6で迎えた9回2死一、二塁。早大本庄の安達公亮(3年)は、2球でツーストライクと追い込まれた。

 3球目。高めに浮いた直球にバットを合わせると、左翼線に落ちる二塁打になった。2人を生還させ、最後まで粘りの野球を見せた。

 背番号1をつけるエースだ。右肩のけがを治して大会に臨んだ。

 この日は5回から登板。3失点を喫したが、川越東の4番に対して、直球で真っ向勝負。3度すべて打ちとった。わくわくしたという相手に、整列の時、「甲子園に行けよ」と夢を託した。

◇昨夏4強の兄「越えたい」 南稜・野川選手

 9回表、1点を追いかける2死一塁の場面で、南稜の野川純(2年)に打席が回ってきた。ここまで4打数無安打。外角高めにきた直球をたたいた打球は中前へ抜け=写真=、二塁上で力強くガッツポーズした。

 野川は野球にかける原動力を「兄に対する反骨心」と言い切る。昨夏の埼玉大会で、川口青陵を初の4強に導いた左腕野川拓斗さん(18)が兄だ。

 比べられるのが嫌いだが、「兄が浴びた以上の注目を浴びることで、兄を越えたい」。試合に敗れ、ひとしきり泣いた後、来年の甲子園を見据えて言った。

◇好調打線支え、勢い呼ぶ7番 西武台・西山選手

 シード校2校を連破して準々決勝進出を果たした西武台。好調な打線を引っ張るのが、7番打者の西山登(3年)だ。

 7回1死三塁。昌平の救援・広橋希(1年)の直球にバットを短く持った。ミートを心がけると、中堅手の頭上を越える三塁打となった=写真。

 この日は5打数3安打4打点の活躍。4回戦の浦和北戦では練習試合を含めて初めての本塁打を放った。

 「これまではずっと大振りしてきた。3年生になり、責任感が出てきた」と自らを分析する。

 昨年は2回戦で失策を犯し、途中交代と悔しい思いをした。次は優勝候補の花咲徳栄戦。「次につなげる」7番打者が強豪に挑む。

◇5回裏の好機「1本」届かず 昌平・岩崎優一主将

 2回裏。昌平の主将、4番岩崎優一(3年)は、試合の流れを引き寄せたかった。1点先制された直後の先頭打者。フルカウントから、低めの直球に反応し、中前に運んだ。あとが続いて、同点の本塁を踏んだ。

 だが、5回裏2死満塁では、ストライクからボールへ逃げていくスライダーを振らされ三振、天を仰いだ。

 「何としても1本ほしかったが、捕手の自分も、あの球を要求する」。涙をあふれさせながら、相手をたたえた。

◇「自分が驚いた」公式戦初本塁打 花咲徳栄・田中選手

 公式戦初本塁打が流れを呼び込んだ。

 0―0で迎えた6回表の花咲徳栄の攻撃。先頭の9番田中悠生(2年)が「何とか塁に出て足を生かしたい」とインコースの直球を振り抜くと、打球は99メートル先にある右翼席に吸い込まれた。

 「足が速く守備範囲が広い」(岩井隆監督)と、先発に起用された背番号18。「打った自分が一番驚いた」と、目を丸くしながらダイヤモンドを一周した。

 打線は勢いづいて長短打や犠打などで、この回さらに4点。春夏連続の甲子園へチームを前進させる一打となった。田中は「みんなが喜んでくれてベンチの雰囲気がよくなったのがうれしい」と振り返った。

朝日新聞埼玉版)