春日部共栄、競り勝つ 全国高校野球埼玉大会

(19日・県営大宮ほか)

 第9日は3球場で4回戦の8試合が行われ、春日部共栄が九回に勝ち越し、大宮東に4−3で競り勝った。

 南稜は伊奈学園に9−4で逆転勝ちし16年ぶりの16強入り。西武台はDシード浦和北の追撃をしのいで6−5で勝った。Bシード川越東は栄北を3−1で振り切った。

 Aシード花咲徳栄は越ヶ谷を9−2、Cシード昌平は松山を7−0で下し順当に5回戦へ進出。早大本庄は桶川、富士見は岩槻にそれぞれコールド勝ちした。

 休みを1日挟み第10日は21日、県営大宮など3球場で4回戦残り8試合が行われる。

◇栄北、強豪相手に堂々接戦

 2点を追う九回2死満塁。2番風間の打球が右翼手のグラブに収まると栄北の夏が終わりを告げた。Bシード川越東と互角に渡り合ったが、あと一歩及ばなかった。

 1点を争うシーソーゲーム。明暗を分けたのは八回の攻防だった。栄北は2死から川越東の2番手高梨を攻め、連打で一、二塁。しかし、次打者のときに、二塁走者神谷が中途半端に飛び出して三塁でタッチアウト。その直後、川越東に勝ち越しを許した。佐久間監督は「勝負どころの差ですね」と悔しがった。

 気持ちでは一歩も引かなかった。強豪相手のときには、名前負けしないで戦えるかが大きなカギを握る。新チーム結成後、精神面が課題だった。最初は闘志や競争心が全然なかったという。負けたら悔しいという思いを厳しい練習量をこなす中で養った。

 九回の攻撃で意地を見せた。マウンドには今大会注目左腕の高梨。最後まであきらめず、2死一塁から9番阿久津がしぶとく左前に運ぶ。1番滝沢が追い込まれながらも、死球で満塁。続く2番風間は右邪飛に倒れたが「同じ3年生がいい形でつないでくれた。フルスイングできたから悔いはない」。主将の市川も「1年間、気持ちの面で鍛えられ、自信がついた。すべて出し尽くした」と胸を張った。

 指揮官は「Bシード相手によく食らいついてくれた」と選手をたたえた。そして最後につぶやいた。「前までだったらおびえてコールド負けしてますよ」

◇南稜、「合言葉」胸に総攻撃

 3−4で迎えた八回の攻撃。ベンチに「南稜タイム」のボードが掲げられた。さあ、反撃の始まりだ。八、九回で一挙6得点してゲームセット。身上の終盤の粘りを発揮して、どっちつかずだった勝利の女神を振り向かせた。

 四回に1点を勝ち越されても、五〜七回は三者凡退に終わっても動じない。「ここからがうちの持ち味」と遠山監督。選手もスタンドも笑顔で勝利を信じ続けた。

 八回、先頭打者に打撃センスのある代打玉森を起用。中前打で出塁すると、続く菅原の左越え二塁打で同点に。さらに1死三塁から野川の犠飛で鮮やかに勝ち越し。

 九回には相手のミスに乗じて無安打で4得点。5点差にリードを広げてダメを押した。

 遠山監督は「最初は僕が消極的になっちゃって」と苦笑。勝利を意識しすぎ、手堅く小さくまとまった攻撃を展開。逆転されて目が覚めたという。「真っ向勝負してこい」と選手を送り出し、シンプルに打つことだけを心掛けた。

 伊奈学園との対戦が決まると、すぐに対策に打って出た。直球に切れがある出羽を想定し、まずは打撃マシンで速さに慣れた。その後は、近距離で打撃投手に投げてもらい、ひたすら打ち込んだ。同点打を放った菅原は、「外の速い球を打つことを徹底していた。あの場面は練習通り」と攻略に胸を張った。

 チームは16年ぶりの5回戦進出に勢いづく。「挑戦者として臨む」と主将の松下。「南稜タイム」の合言葉が、この夏の快進撃の合言葉にもなりそうだ。

◇「自分流」成長刻む 春日部共栄・鎌田投手

 七回裏、逆転される可能性もあった大ピンチ、百戦錬磨の本多監督は意を決したかのように、ベンチにどっかり腰を下ろし、動かなかった。「あいつは前の2試合、最後までマウンドにいなかったよ。『今日は頑張ってくれよ』と思って賭けた」

 視線の先には今大会から背番号1をつけた鎌田。1死満塁からタイムリーを許し、さらに失策の間に同点とされたが、「打たれてもしようがない。焦ったらいつもの繰り返し」と鎌田は冷静だった。

 続く打者を二直併殺に仕留め、逆転のピンチを脱出。味方が勝ち越した後の九回も1死二塁と同点のピンチで後続を抑えた。強打の大宮東を相手に3失点で今大会初完投、監督の期待に応えた。

 入部後はしばらく遊撃手だったが、昨年のエース中村(現日本ハム)にあこがれ、一緒に自主練習させてもらった。「投手をやりたかったので付いていこうと思った」。中学時代は春日部シニアで投手。先輩の投球フォームを参考にして、1番を背負う日を待った。

 春も投げる予定だったが、ひじの故障でデビューが夏までずれ込んだ。プロ入りした先輩にはまだ及ばないが、本多監督は「将来性はある」と期待する。

 自身は「(中村)勝さんはいいお手本だったが、自分のスタイルでいこうと思った。気持ちを出さなければ自分じゃない」。一試合ごとに成長を刻むエースの顔に自信が満ちあふれた。

 身長182センチ、体重74キロ、春日部東中出身。

埼玉新聞