和光・佐野投手、13奪三振報われず

 最後の打者は中飛に倒れた。ゲームセット。ホームベース上で整列し、握手を交わした選手から健闘をたたえられると、こらえていた涙があふれた。

 1年の秋から和光のエースナンバーを背負う佐野泰雄(3年)。大会屈指の本格派左腕として注目された。この日も「調子は悪くなかった」。直球は伸び、カーブも切れた。奪三振13。だが、味方打線は、要所を抑える所沢北の主戦を打ちあぐねた。

 入学直後、熊井康二監督から「何キロ投げたいんだ」と聞かれ、「140キロ」と答えた。当時の球速は120キロを少し超す程度。「そうか、145キロを目指せ」

 「とにかく腕を振れ」「みんなと同じトレーニングではだめだ。人一倍やれ」と監督に言われ続けた。

 球威は増した。ただ、制球に難があり、四球を重ねることも多かった。走りこみで下半身を強化。6キロの砂入りジャケットを羽織って走るといった努力を重ね、「四球は出しても抑えられるようになった」と自信がついた。

 昨年、新チームになってからは主将でもあった。だが、秋の新人戦では、背番号16に下げられた。「野球は一人でやるのではない。チーム全体をまとめてほしい」との熊井監督の思いがあった。

 今夏、主戦としても主将としてもチームを引っ張った。初戦の2回戦では、シード校の朝霞に3―2で競り勝った。番狂わせではなかった。大会前、朝日新聞の主将アンケートに「目標は優勝。本気で狙っている」と書いた。

 「3年間の野球生活に悔いはない。でも、勝ちたかった」。試合後の言葉には、やはり悔しさがにじんだ。

朝日新聞埼玉版)