にじんだ投手への思い 永田智大内野手(聖望学園3年)

 「(目の前の)一人のバッターに全力でいけ」。昨年夏の甲子園大会で登板したものの、ひじの故障で野手に転向した聖望の永田智大選手(三年)は、自分の代わりにマウンドに立つ投手に声をかけ続けた。

 昨年新チームになってからは、コントロールと変化球の良さから、「新チームのエース」と期待された。冬は、走り込みと投げ込みを繰り返した。

 しかし、今年三月、調子の悪かったひじに疲労骨折が発覚。投手として夏の県予選に間に合わないことを知り、「絶望的な気持ちになった」。岡本幹成監督に「野手のリーダーになれ」と声をかけられ、気持ちを切り替えた。一人で夜遅くまでノックを受け、努力を重ねた。

 この日は、昨年夏の自分の経験から、孤立しがちな投手に、「バックがついているから」とも声をかけ、励ました。

 試合後、岡本監督は「永田がエースなら少しは違ったかもな」と唇をかんだ。永田選手は「もう一度甲子園で投げたかった。先輩とも約束したのに…」と、あきらめたはずの投手への思いがにじんだ。

東京新聞埼玉版)