響いた序盤の失点 シード校の朝霞、姿消す

◇被安打3…力投報われず涙―朝霞・尾崎亮投手

(和光3―2朝霞)

 「ナイスピッチング」

 胸の中で何度もつぶやきながら、朝霞の尾崎亮(3年)は完投した。

 惜しまれるのは立ち上がり。1回2死一、二塁、高めに入った甘い直球を右中間に運ばれる二塁打を浴び、四死球で出した2人の生還を許した。3回には2連続長短打でさらに1点を奪われた。

 「力では勝てない。自分は打たせて取ろう」。そう意識しすぎて腕が縮こまったのは、今大会注目の左腕、和光の佐野泰雄が相手だったからだ。

 「とにかく思いっきり腕を振れ」。4回のマウンドに向かう前、スタンドから二つ上の先輩の声が聞こえた。

 これで気持ちが切り替わった。直球に切れが増し、スライダーで三振が取れるようになった。4回以降、許した走者は四球と失策の2人。三振は三つ。ほかは内野ゴロやフライでアウトの山を築いた。

 被安打3。崩れることなく、1点差の好ゲームを作った。力任せで勝負していた以前の姿はない。

 1年秋、本格的に投手としてプレーを始めた。デビュー戦は3者連続死球。そこから宮川浩之監督とフォームの改善に乗りだした。鏡を見ながら練習し、家でもシャドーピッチングを繰り返した。

 「投手は自分でゲームを作る一番大事なポジション」と思い、この夏までやってきた。

 和光戦の後、球場の壁にもたれ泣き続けた。一人、二人とチームメートが肩をポンっとたたき励ましていく。「よく投げた」「頑張ったよ」

 その言葉に、涙が流れ続けた。

◇副主将の反撃打、追い上げ届かず 豊岡・金谷選手

 豊岡が5点を追う7回表2死二、三塁、金谷鷹人(3年)は内角速球を右翼線へ運ぶ二塁打を放ち、2者が生還した。副主将の積極的な打撃から、チームが息を吹き返した。

 9回表は無死一、二塁で金谷が打席に。カウントはノースリー。しかし、ここで「力んでしまった」。二塁ゴロに倒れ、反撃がしぼんだ。

 金谷は遊撃手。冬場に十数メートルの近距離からのノックを30分間受ける練習を積んだ。「球際に強くなる」ためで、下半身も強化され、打撃にも効果があったという。

 主将の高橋淳(同)は金谷を「攻守ともに軸の存在」と語る。金谷は期待に応え、二塁打2本と2打点を記録。しかし、勝ち進んでシード校坂戸西を倒す目標は果たせなかった。「悔しい。後輩たちは1試合でも長く、野球を楽しんでやってほしい」と唇をかんだ。

城西大川越、9回反撃及ばず

 6点を追う9回表。城西大川越の先頭打者、4番斉藤雄也(2年)は、市立浦和の救援浦川広太郎(2年)の異変を見逃さなかった。伸びなくなった直球をたたき、放った右前打が反撃の口火を切った。3安打、四死球などで4点を返した。

 4回から登板し、8回まで二塁を踏ませない好投を見せていた浦川は「勝ちを意識して制球が定まらなくなった」という。2点差まで詰め寄られて1死満塁。タイムを取った捕手の松崎健介(3年)に「楽に、一つひとつ」と声をかけられると、肩の力が抜けた。続く打者を三振と遊ゴロに打ち取った。

◇継投策が成功、延長10回制す 杉戸

 杉戸は、沼口祐太(3年)から茂田悟(同)への継投が成功した。

 2回まで2―0とリード。沼口は降雨ノーゲームにさせまいと、「序盤から飛ばしすぎた」。雨で足元が滑り投球が乱れ、中盤に四球から失点。8回裏に3―3の同点に。なお2死一、二塁のピンチを迎え、「頼んだ」と茂田にマウンドを譲った。

 茂田は「みんなの気持ちをボールに込めて投げた」。落ち着いて投ゴロに打ち取り、ベンチで仲間と抱き合った。

◇先制と逆転の2本塁打で活躍 鷲宮・谷沢選手

 鷲宮の谷沢由浩(3年)が1試合2本の2点本塁打を放ち、気を吐いた。

 1本目は1回裏1死三塁。草加西の先発圷(あくつ)雄大(3年)が投じた球を振り抜いた。球は梅雨空の中を滞空時間の長いアーチを描いて無人の右翼席に届き、先制。5回裏2死二塁での2本目は、やはり右翼席に飛び込む逆転の一打となった。

 「2本ともスライダー。バットにうまく乗ってくれた。速球主体で疲れてきたようなので、(2本目は)スライダーが来ると思った。チームの流れが少し悪かったので、よかった」と谷沢。

 開幕戦で第1号本塁打を放ち、この日は左前安打を含め4打数3安打4打点の活躍。柿原実監督は「谷沢さまさまです」と勝利を喜んだ。

朝日新聞埼玉版)