苦手の“太陽”に力もらう 川越総合3年 豊田智史投手

 「野球をやってきて良かった」と心から思った。ボランティアで接してきた介護施設のお年寄りの「まず1勝。ファイト!」という期待にも応えられた夏だった。

 紫外線を多量に浴びると、失明につながる恐れのある難病を患っている。中学時代に野球をあきらめたが、好きな道への思いは抑えきれず、高校入学とともに野球部の門をたたいた。

 「投手をやりたい」と手を挙げてはみたものの、小学6年以来のブランクが予想以上に足を引っ張り、ブルペンにも入れない毎日。それでも腐らず、打撃投手を買って出るなどアピールを続けた。走り込みで下半身を鍛え、シャドーピッチングで投球フォームも磨いた。そうした2年余りの努力が実り、大会直前、沢田泰造監督から念願の背番号「1」を渡された。

 11日の初戦は先発し、7回を投げきった。しかし、この日は六回途中、ピンチを作って降板。「最後まで投げたかった」。ちょっぴり悔いも残った。

 この夏、ベンチには、日盛りに咲き誇る無数のヒマワリを描いた張り絵が飾られた。ボランティアのお礼にと、介護施設のお年寄りたちがチームにプレゼントしてくれたものだ。今でも太陽は苦手なはずだが、絵の中の“太陽”には力をもらった。

(読売新聞埼玉版)