和光、朝霞に競り勝つ 熊谷西、シード完封

(13日・県営大宮ほか)

 第5日は9球場で2回戦21試合が行われ、3試合でノーシード校がシード校を破った。和光はCシード朝霞に3−2で競り勝ち、蓮田松韻はDシード立教新座に8−2で快勝。熊谷西はDシード武南に4−0で完封勝ちした。

 鷲宮は谷沢の2本塁打草加西に4−3の逆転勝ち。谷沢は2試合連続、今大会3本目をマークした。杉戸は延長十回の末、狭山経済を5−3で下した。

 第6日は14日、上尾市民球場で雨天順延になった2回戦の残り2試合、桶川−滑川総合(午前10時)と浦和西−越谷北(午後0時30分)が行われる。

◇市浦和、捕手との絆で初勝利

 捕手との絆で平常心を取り戻した左腕・浦川が九回のピンチを乗り切り、うれしい公式戦初勝利を飾った。

 7−2とリードした四回表。エース高本の2番手として登板し、七回までは毎回の三者凡退と完ぺき。八回は内野安打2本を許したが、無失点で切り抜けた。

 ところが「勝利を目前に焦った」という九回にはボールが先行。四球と二つの死球、さらに内野の失策で6点あったリードが、2点差まで追い上げられた。

 ピンチを乗り切れたのは「死球は攻めた結果。気にするな」という捕手松崎の一言。「この言葉ですっと肩の力が抜けた。勝利を意識せず、一人一人を抑えよう」と切り替えた浦川

 その後は、3番打者を得意の直球で三振、最後は二死満塁から4番打者を内野ゴロで打ち取った。

 「よく気持ちを切り替えてくれた」と2人を褒める中村監督。チームメートから祝福を受けた浦川は満面の笑み。

 「自分は切れのあるストレートが持ち味。きょうの経験を生かし、自信を持って落ち着いた投球を心掛けたい」

◇和光、攻守そつなく波乱演出

 プロ注目・左腕佐野の粘投を堅守で支え、少ない好機を確実にものにする。新チーム結成以降、公式戦未勝利だった和光が理想的な形でCシード朝霞を下した。熊井監督は「三万点満点の試合」と満面の笑みだった。

 佐野は「調子が悪かった」と制球が定まらず7四死球を与えた。五、八回を除き、毎回走者を得点圏に背負う苦しい投球。しかしバックが無失策でもり立てた。

 七回、1点差に詰め寄られ、なお1死二塁。4番大谷の遊ゴロで飛び出した二塁走者桜井を冷静に挟殺。さらに捕手柴崎が盗塁を刺し、流れを戻した。1年からバッテリーを組む女房役は「佐野を助けられてよかった」と誇らしげだった。

 仲間の支えに応え、エースは再三のピンチを最少失点でしのいだ。「気合は全開だった」と抑えるたびに雄たけびを上げ、チームが盛り上がった。

 佐野ばかり注目される中、熊井監督は「一人に頼るのではなく、ほかの選手がどれだけ頑張れるか」と言い聞かせてきた。そんな思いが結実し、会心の勝利につながった。「三振は取りたいけど、チームが勝てればいいです」。エースは次戦も仲間を信じ、力投することを誓った。

◇蓮田松韻、初陣の夏 新たな歴史

 蓮田と菖蒲が統合して4月に誕生した学校が、新校名として初陣の夏の初戦で、いきなりシード校撃破の歴史を打ち立てた。

 一回、先頭野本の右中間二塁打を皮切りに長短5連打。6番岡部がスクイズで畳み掛けて3点を先制し、流れをがっちり引き寄せた。七回にも4連打の先陣を飾った野本は「初球から狙っていた。1番の役目が果たせた」とにっこり。

 一回の先制2点適時二塁打をはじめ、3安打3打点と大暴れの小林も「野本が出塁すると勢いがつく」と、先頭打者に賛辞を贈った。

 打線の後押しに投手陣も呼応した。五回まで零封の出野は「低めの投球を心掛けた。抑えられてよかった」。最後を締めた緒方は「すごく気持ちいい」と勝利を喜んだ。

 シード校相手に終始優位な試合展開。内迫監督は「ミスをカバーし合えた。何より、この一戦に懸ける気持ちが伝わってきた」と目を細めた。

◇東野、学年超えた白球の友情

 11日の1回戦で22年ぶりに夏の1勝を挙げた東野。創部初の3回戦進出を懸けて13日の本庄東戦に登板したエース工藤貴也投手(3年)には頼りにしていた相棒がいなかった。捕手の佐藤淳選手(2年)が1回戦で右足首のじん帯を損傷したため欠場。扇の要を欠いた影響でチームは敗れたが、試合後に2人は学年を超えた友情を確認し合った。

 苦しい試合だった。本庄東戦は遊撃の杉本大輝選手を捕手に回し、途中から1年生の大島健一選手を抜てきしたが、仲本監督は「けが人が出てベストで臨めなかった。そこをうまく突かれてしまった」。結局コールド負けし、チーム本来の力を出せなかった。

 佐藤選手は1回戦の四回、走者として三塁を回り、急停止した際に足を負傷。その後も試合に出場し続け、歴史的勝利に貢献したが、代償は大きかった。「自分が出ると迷惑が掛かるから、ベンチでずっと声を掛けていた。本当は先輩と野球がやりたかった」。マウンドの工藤投手も心細さを感じていた。「いつも一緒にやってきたので、いなくて不安があった」

 2人がコンビを組んだのは昨春。捕手ができる選手がいなくなり、中学時代は左翼を守っていた佐藤選手が転向した。「最初は怒られてばかりだった」。ショートバウンドが取れず、仲間への指示を出せない佐藤選手に先輩は厳しかった。それでも必死に練習する姿を工藤投手は見ていた。

 「肩、良くなったな」。今春、佐藤選手は先輩に褒められたことが何よりうれしかった。工藤投手も「リードもできるようになったし、いい感じのバッテリーになってきた」。お互いに感じていた手応えがこの夏、現チームの公式戦初勝利という形になって表れた。

 敗戦後、ベンチ裏で2人だけで言葉を交わし、涙ながらに固く抱き合った。

 佐藤「ナイスピッチング。お疲れさまでした」。

 工藤「最後はおまえとバッテリーを組みたかったよ」。

埼玉新聞