役割の自覚促し束ねる 秀明英光・吉橋一真主将
9回表2死。大粒の雨が降りしきる中、秀明英光の主将の名前がアナウンスされた。
吉橋一真(3年)。昨秋、新チームになってから公式戦でスタメンはない。今大会2試合目となったこの場面で、出場機会を得た。
「悔いのないように思い切って振る」と決めた。
だが、芯をとらえるのは難しく三振。試合は終わった。
チームメートに推され主将になった。「みんなが選んでくれるならやるしかない」と引き受けた。
当初は、選手それぞれが個人プレーに走り、チームプレーができない状態だったという。秋の県大会では初戦で敗退した。
チームとして勝つためにどうすべきか。考えた結論は「一人ひとりが自分の役割を自覚すること」だった。体の小さな選手には小技をからめた攻撃を勧めるなど、選手の特徴を理解するように努めた。成果は徐々に出て、今夏は1回戦を突破した。
背番号5の控え。くさることはなかった。「自分が試合に出る出ないは関係ない。チームとして、どう戦うかを最優先でやろう」と考えてきた。
今年は1、2年生主体のチームだった。
「個性的な若手を一生懸命まとめてくれた。何事にも全力でやってきた吉橋しかいなかった」。秋山剛一監督は最後の場面で起用した理由をそう話した。
(朝日新聞埼玉版)