大井が埼玉栄破る 所沢西、延長13回制す

(12日・県営大宮ほか)

 第4日は10球場で2回戦24試合が行われ、2試合でサヨナラ勝ち。大井は九回に布施の適時打で、昨年準優勝の埼玉栄を7−6で撃破。所沢西は延長十三回の末、小川を1−0で下した。

 春季関東大会覇者のAシード浦和学院は浦和実に4点を先制されたが、13−4で逆転勝ち。入間向陽は1−0で西武文理に競り勝った。

 快勝したシード上尾の鈴木が大会史上9人目のサイクル安打を達成した。

 第5日は13日、県営大宮など10球場で2回戦の残り23試合が行われる。

◇大井、逆転サヨナラ勝ち

 逆転、再逆転のシーソーゲーム。八回に同点に追い付いた大井が九回裏2死二塁、布施の中前打でサヨナラ勝ちした。昨夏の準優勝・埼玉栄を破り、布施は「全員野球の勝利」と胸を張った。

 再起を懸けた夏だった。昨秋に部員の不祥事が発覚。6カ月の対外試合禁止を言い渡され、秋季大会は不参加。チームミーティングを優先し、練習は個別ばかり。熟成期に苦難が続き、「外では好奇の目で見られ、チームはバラバラだった」と主将の島津。丸山監督の「いろいろあってこそ強くなる」との言葉が唯一の支えだった。

 3月下旬にようやく試合が解禁になったものの、春季地区大会は守備位置も定まらないまま1回戦敗退。夏にすべてが懸かっていた。大会前に「笑顔、全力疾走、強気=負けん気」の3原則を考え、スローガンに掲げた。つらかった時期を忘れないために。

 チームは、その通りに戦った。先行されてもあきらめず、追い付いて、そして逆転。単打と機動力で揺さぶり続け、総合力で勝利をもぎ取った。完投した左腕黒田は「やっとチームが一丸になれた」と晴れやかに笑った。

 丸山監督は「あの時期があったから試合でも辛抱できた。今日は本当に良かった」と選手に温かいまなざしを向けた。再起の夏は、まだ続く。「野球ができてすごくうれしい。見守ってくれた人に試合で恩返しがしたい」と島津。プレーする喜びをかみ締めた。

◇所沢西、場数踏み接戦で底力

 三塁側ベンチから一斉に喜びを爆発させた所沢西ナインが、一塁を回った柴田めがけて猛進した。延長十三回裏。スコアボードに初めて「0」以外の数字を付けた主将の一打にチームは興奮した。

 新チームになって、公式戦初勝利を狙う両校の初戦。ともに守備を重視する。土壇場のワンチャンスをものにした所沢西に軍配が上がった。

 十三回裏1死満塁、柴田は直球を左翼前にはじき返した。「外野フライでも良しと思った。勝手に体が反応した」と柴田。

 所沢西の夏は6年間、初戦敗退が続いた。ゲーム数を踏むことで力を付けようと、新チームは約110試合の練習試合をこなしてきた。倉繁監督は「経験不足の負けが多かった。きょうの勝利は練習試合の経験あってこそ、持ちこたえられた」とうなずく。

 試合後、ベンチ裏で選手らは号泣した。3年生の岡野は「6年間、夏に勝てず、うれしさが募った」と目を充血させた。

 倉繁監督は「うちは打てないチームだから」と自嘲(じちょう)気味に分析。完投した2年関口は「打てないチームでなく、守り抜き、最後の1本で勝つチームなんです」。

 チームカラーを表現し、久しぶりの夏2戦目に挑む。

◇制球磨き大黒柱に 入間向陽・林投手

 エースが虎の子の1点を守った。西武文理に7安打されながらも、公式戦で初めての完封。「抽選会の時、(主将の石川に)自分が責任を取るからくじを引かせてくれ、と頼んで決まった対戦だから負けられなかった」と興奮を隠せない。

 もともとは右本格派だったが、昨夏に新チームが発足すると横手投げにフォームを改造。制球難を克服するためだ。この日はコントロールに苦しんだのがうそのように、丁寧な投球術がさえた。

 七回を除いて毎回走者を許したが、ピンチで底力を発揮した。内角を直球でずばっと突いてねじ伏せたかと思うと、九回の無死二塁の場面では、スライダーを効果的に織り交ぜて後続をピシャリ。背番号1は「インコースを攻める場合は、打者に当てるぐらいのつもりだった。(捕手の)冨田を信頼して、思い切り腕を振るだけだった」と相棒に感謝した。

 就任2年目の西沢監督は同校での夏初勝利をプレゼントされ、「ゼロに抑えたのだから、100点ですよ。九回はしびれた」と笑みが絶えない。「不安だったコントロールに自信が付いてきた。これからも、打たせて取る」と右腕。ごく普通の県立校チームに、頼れる大黒柱が誕生した。

 身長174センチ、体重70キロ、飯能吾野中出身。

埼玉新聞

◇俊足生かして9回裏に好機 西武文理・渡辺選手

 9回裏、1点を追う西武文理。8回まで、入間向陽の右腕林聖也(3年)の緩急織り交ぜた粘りの投球に苦しめられ、無得点。先頭打者の渡辺雄大郎(同)は「出塁するしかない」と足にかけた。初球をバントで転がし、捕手の悪送球を誘って無死二塁として、一打同点の好機をつくった。球場は大歓声に包まれたが、後続が退けられた。

 渡辺は左翼手として堅守の要にもなった。1回表1死一塁。自らの頭を越えていく大飛球に背走して跳びつき、好捕した。「守備範囲が広いことを監督に買われた」と練習を積み上げ、試合を盛り上げる美技を見せた。

◇一カ月前から髪のばす理由…校名浮かぶ頭文字

 勝つぞ、松高――。一塁側の応援席では、松山の1年部員7人が「頭文字」を披露した。バリカンで刈り、「MATSUKO」の一文字ずつを浮かばせた。

 野球部員は丸刈りが規則だが、1年生は大会の約1カ月前から髪を切らず、試合前日に7人ずつ、お互いの頭を刈ることにした。10日の1回戦では別の1年が「頭文字」を披露した。

 1年生は31人。「M」の文字を見せた洞内輝君(1年)は「1年生だけでは足りないほど勝ち進んでほしい」。

朝日新聞埼玉版)

◇浦学・南不安…1回4失点降板

 浦和学院が13−4で浦和実に勝利した。

 最後の夏が、不穏な幕開けだ。日米11球団、27人のスカウトが見つめるなか、浦和学院の197センチ右腕、南貴樹投手(3年)が初戦の浦和実戦に先発。しかし、1回に4安打を許して4点を先制され、2回から背番号1の阿部良亮投手(3年)にマウンドを譲った。最速145キロを誇る直球も140キロ止まり。打撃マシンで「南対策」を行っていた浦和実打線につかまり「球自体は悪くなかったけど、初戦で緊張していた。自信を持って投げられるように修正したい」とリベンジを誓った。巨人山下哲治スカウト部長は「力みがあった。パッと抑えてくれたらうれしいんだけど。上背もあるし、いいものは持ってるよ」と今後の活躍に期待していた。

正智深谷が初戦突破

 シード校の正智深谷が初戦を突破した。新座総合技術を6−1で下し、3回戦へ駒を進めた。8番の吉田和真捕手(3年)が3打数3安打1死球と打線を引っ張った。

 昨秋、今春と県大会はベスト16止まり。田中貴晴監督(38)は「16を越えないと先はない。壁を破らせてあげたい。18日(の3回戦)に絶好調になるようにしたい。どのくらい勝てるか楽しみです」と期待していた。

◇浦和東はサッカー部が応援

 サッカーW杯日本代表のGK川島の母校・浦和東が0−16で越ケ谷に6回コールド負けした。同校はサッカー部員と野球部員が互いの公式戦応援へ足を運ぶのが慣例。この日は総勢140人のサッカー部員がスタンドで応援。早朝、W杯南アフリカ大会決勝を観戦した部員も多いが「眠いなんて言ってられない。頑張れ、野球部」と声援を送った。大量失点する展開に、サッカー部の星子雅典主将(3年)は「1点取られても切り替えが大事だぞ」と大声でナインを鼓舞していた。サッカー部の先輩のような活躍はできなかったが、野球部主将の出口奨吾内野手(3年)は「たくさんの人が応援してくれてうれしかったです」と笑顔を見せた。

◇越ヶ谷が先発全員“得点”

 越ケ谷が12安打16得点の猛攻で快勝した。浦和東に16−0の6回コールドは先発全員得点のおまけ付きだ。腰痛で1回戦の登板を回避した左腕・飯田大稀投手(3年)が2安打完封でエースの貫禄(かんろく)を見せ、スタンドで踊る女子ダンス部員70人の応援に応えた。山沢賢勇主将(3年)は「天気が良くなかったので守備の声掛けを徹底しようと話し合いました。これだけ点を取ったのはたまたま。次もしっかり勝って、花咲徳栄と戦いたいです」と力強く話した。

(日刊スポーツ)