<熱球譜>木内達也捕手(3年)1点差に迫る 2点適時打

 3点を追う八回裏、一死満塁の好機で木内達也捕手(三年)は打席に入った。真ん中のカーブを打ち返し、「抜けてくれ」と祈りながら一塁へ走った。打球は二塁手の横を抜け、2点が入り、1点差に迫った。

 前半、五明投手の制球は定まらず打線も快音が聞かれなかった。重苦しい空気のまま五回表、木内捕手は二塁を狙った走者を刺そうと送球したが、ボールを握り損ね、大きくそれて6点目を許した。

 それでも、必死に流れを変えようと守りでは低めのスライダーに活路を見いだし、苦しむ五明投手の力を引き出した。少しずつ反撃ムードが高まり、八回の適時打につながってチームは勢いづいた。「自分のせいで失点した。絶対取り返したかった」という意地の一打だった。

 同じ高校球児だった兄翔太さん(21)の影響で五歳から野球を始めた木内選手。自ら果たせなかった甲子園出場を喜んでくれた兄や家族のためにもっと上を目指したいという。

 前の試合では、先発で一人だけ無安打。奮起してこの日は、チーム初安打を含む2安打2打点の活躍にも納得できず、試合後に号泣した。「支えてくれた人たちのためにも夏に甲子園に出ます」と誓う。

東京新聞埼玉版)