聖望 3年ぶり4強 春日部東 継投実る 高校野球埼玉大会第12日

 第91回全国高校野球選手権埼玉大会は25日、準々決勝2試合が県営大宮球場で行われた。昨春の選抜準優勝校・聖望学園は、本庄一に競り勝った。浦和学院との5回戦に続き、昨夏の甲子園出場校に連勝し、3年ぶりの4強入り。公立校同士の熱戦は、春日部東が市立川越を破り、8年ぶりで準決勝に進出した。26日は準々決勝の残り2試合が同球場で予定される。

◇白球対決 スクイズ阻止流れつかむ

 市立川越は江沢、弥田、丹羽のクリーンアップが2安打ずつと奮闘し、春日部東を3本上回る10安打を放ったが、3併殺で9残塁と拙攻が目立った。

 守備からリズムに乗るのが聖望学園の野球だ。この試合では、本庄一の4点目を阻んだ好守で、試合の流れを大きく手元に引き寄せた。

 三回表、本庄一は3点目を見事なセーフティースクイズで奪い、なお無死一、三塁の絶好機を迎えた。打席には5番の渋沢寿紀。ベンチの須長三郎監督は、またしてもセーフティースクイズのサインを送った。「5点以内の1点差勝負になる」と読んでいた監督は、次の1点をノドから手が出るほど欲していた。

 渋沢は3球目に食らいつき、一塁線に転がした。決して悪いバントではなかったし、「足には自信がある」という三塁走者の田村和麻も、思い切りよくホームを目指した。だが――。

 聖望学園はこの試合、内野守備のうまさを買って、普段は外野で先発する城戸愉快を、一塁手に回していた。しかもこの場面、城戸は岡本幹成監督の指示を受け、定位置よりも3〜4メートル前進して腰を落としていた。

 渋沢のスクイズを、城戸はダッシュよく捕球。約2メートル先の捕手・河合賢人へ、迷わずグラブトスでボールを送った。「練習でもやったことない送球。攻める気持ちでホームに投げた」。間一髪、タッチアウト。城戸は小さくうなずいた。

 続く高いバウンドの遊ゴロも強肩の西村凌が落ち着いて処理し、3アウト目も投ゴロで切り抜け、失点を食い止めた。聖望学園の反撃は、この回の裏に、さっそく始まっている。序盤はピリッとしなかったエース佐藤勇吾の投球も、中盤以降は見違えるほど安定感を増した。

 逆転勝ちへの“プロローグ”になったスクイズ守備を、試合後の岡本監督は「もう1点入ったら負けていた。“小技”がくると思っていた」と振り返った。指揮官の読みと、それを生かせる鍛えられた内野守備。試合巧者同士の接戦を制して、チームは上昇気流に乗ったようだ。

◇伊藤、プロ入り目標 本庄一

 本庄一のエース伊藤ディエゴは、同点で迎えた五回一死二、三塁でマウンドに上がった。左犠飛を打たれたものの、その後は0点に抑える好救援を見せた。「変化球を投げようとしたら、タイミングがずれて直球になった」と唯一の失投を悔やんだ。

 ブラジルから来た留学生。何度も帰りたいと思ったが、仲間と遅くまで練習するうちに「あきらめないという気持ちを共有することが大切」と学んだ。将来の目標は日本のプロ野球。「日本の野球はレベルが高い。だからこそ挑戦したい」と飛躍を誓った。

(読売新聞埼玉版)