拮抗の公立対決制す 春日部東

 実力差は紙一重。戦力が拮抗(きっこう)する者同士の一戦は、一球が試合の流れを大きく左右する。そんなつばぜり合いを制し、最後に押し切ったのは春日部東だった。

 両チームの明暗が分かれたのは四回の攻防だ。市川越は2本の長短打を足掛かりに1死満塁の絶好の先制機を築く。ここで一本出れば、試合の流れが相手に傾いてもおかしくない場面を迎えた。千葉が投げた初球は、外寄りのスライダーだった。相手の打者はスクイズを失敗。併殺で切り抜けた。

 ピンチの後にはチャンスあり。春日部東の中野監督が「ああいうところで点が入らないと、次の回にチャンスが来るものだ」と話す通り、直後に先制点が転がり込む。2死三塁から、4番西田が中前に適時打。わずか1安打の先制劇だった。

 こんな形の得点は試合展開に大きな影響を与える。捕手の小新井は「相手は取れるところで取れてなかった。うちにはいいところでチャンスが来るという雰囲気がベンチに生まれた」と徐々に傾きつつある「勝利の流れ」を感じたという。

 一度手繰り寄せた流れはなかなか変わらない。七回1死満塁のピンチをしのぐと、その裏には下位打線が2人で試合を決めた。

 春日部東はここまでの4試合すべて、3点差以内の競り合いだ。主将の中村も、「自分たちには接戦の経験がある。ピンチでもみんな余裕があった」と何食わぬ顔だ。球運は最後、我慢を知るチームに傾いた。

埼玉新聞

◇好救援 歓喜の雄たけび 春日部東3年 五十嵐寛文投手

 3−2と1点差に迫られ、なおピンチが続く六回無死一、三塁。エース・千葉周(3年)に代わってマウンドに立った。いきなり左前打を浴び同点に。しかし、「次を抑えれば大丈夫」と切り替え、決め球のスライダーで、相手の攻撃を封じた。

 七回以降は四球などでピンチを招く場面もあったが、冷静な投球で無失点に抑え、勝利を呼び込んだ。最後の打者を中飛に打ち取ると、クールな表情を緩ませ、雄たけびを上げた。

 先発投手は、中野春樹監督から試合当日に告げられる。この日も先発を期待したが、呼ばれたのは前の試合、強豪・花咲徳栄に1失点で完投勝ちした千葉だった。互いにライバル視し、しのぎを削る。「千葉がいいピッチングをしていると悔しい」と素直に認める。相手がグラウンドで走り込んでいると、自分も走らずにはいられない。そんな仲だ。

 この日は試合後、めったに礼を言わないという千葉から「よくやってくれた」と感謝された。「これからも2人で助け合いながら、甲子園出場を目指したい」とうれしそうに、息を弾ませた。

(読売新聞埼玉版)