ミット痛打曲がらぬ指無念の主将 花咲徳栄・高橋捕手

 指が曲がらない――。

 7回表2死一、二塁。春日部東・福田雄基(3年)のバットにかすった球がミットに当たった瞬間、花咲徳栄の捕手・高橋一徹(同)に激痛が走った。前の試合で痛めていた親指だった。

 マウンドには、背番号1の東谷優(同)がいた。春日部東を抑え続けた先発の五明大輔(2年)に代わり、まだ3球しか投げていなかった。

 高橋はいったんベンチに下がり、再び球を受けようとした。主将としての責任感もあった。しかし、ミットに手を入れても感覚がなく、指は倍ほどに膨れあがっていた。

 「あとは任せた」。控え捕手の木内達也(同)にマスクを渡し、退いた。

 継投は「ここで三振を取れるのは東谷。あと1人を抑えてくれれば」という監督の岩井隆(39)の作戦だった。それが高橋の不運な退場で思わぬ展開に。連続四球で押し出しとなり、2点適時打を浴びて勝ち越されてしまった。

 「捕ってやりたかった。キャプテンとして情けない」

 医務室で治療を受け、チームの大事な場面にいられなかった高橋は悔しがった。

 9回裏、指に包帯を巻き、ベンチから仲間を大声で励まし続けた。しかし、点を取り返すことはできなかった。「みんなで苦しいことに耐えてきた。甲子園に行きたかった」と唇をかんだ。

朝日新聞埼玉版)