所沢西高吹奏楽部、甲子園でいわき海星高応援

 春の選抜高校野球に21世紀枠で出場する福島県いわき海星高校の初戦(23日予定)を県立所沢西高校吹奏楽部が甲子園で応援する。東日本大震災をきっかけに交流が始まった両校。津波の被害から立ち直ろうとするいわき海星高校のために、所沢西高校の生徒たちは練習に励んでいる。

 いわき海星高校は2011年3月11日、大津波が襲来して校舎1階や体育館が浸水、校庭は厚さ20センチのがれきで埋め尽くされた。所沢西高校の倉川博教諭がいわき海星高校の沢尻京二教頭(現校長)から「校庭がガラスの破片など危険物で埋まり、困っている」と知らされると、生徒に呼び掛け、同年8月末に被災地支援に約50人で訪れた。

 当時、校舎は使えず、いわき海星の生徒たちは別の高校に間借りして授業を続けていた。所沢西の生徒らは校舎の清掃やがれきの除去を手伝った。また、9月の文化祭の収益金で行事用テントや野球部のボール、ヘルメットなどを贈った。

 翌年も夏休みにいわき海星を訪れ、校庭のガラス片を除去したり、仮設住宅で小学生の宿題サポートやお年寄りのマッサージなどのボランティア活動に取り組んだ。いわき市の「フラガール甲子園」にも友情出演して交流を深めた。

 今年1月25日、いわき海星の選抜出場が決まった。ところが校歌を録音したCDや楽譜は津波で流され、同校に吹奏楽部はない。高野連には2月16日までに校歌を収録したCDを提出する必要があった。1月末に依頼された所沢西の金子保夫校長は支援を約束した。

 吹奏楽部顧問の室伏正隆教諭が編曲し、伴奏は吹奏楽部85人、歌は野球部員39人が受け持ち、2月14日に体育館で録音した。吹奏楽部は春の演奏会や卒業式の演奏などを控えて多忙を極めていたが、生徒の頑張りで全てこなした。「いざというとき、生徒はやるものですね」と赤嶺寛教頭や倉川教諭も舌を巻いた。

 いわき海星の対戦相手は同じ21世紀枠出場の北海道・遠軽。所沢西の吹奏楽部1、2年生59人は22日夜、バスで甲子園に向かい、スタンドで校歌や復興ソング「花は咲く」「I love you&I need you ふくしま」などを奏でる。玉田尚子部長は「自分が関われたんだから、精いっぱい応援したい」と力を込める。

 赤嶺教頭は「(所沢西の)生徒はいわき海星の生徒に寄り添っている感じ。めったにない機会だから、出会いを大切にしてほしい」、倉川教諭は「本校の生徒は役立つことを知ると予想以上の力を出す。ひたむきさがよく分かる」と話している。

埼玉新聞