夢は咲く・徳栄(下)新たな課題…足りぬ「我慢」克服へ
浦和学院に圧勝したチームの評判は広まり、関東大会の優勝候補の一つに挙げられた。
「気が緩んで勝てなくなるのが怖い」。不安を感じた根建洸太主将(2年)は秋の県大会直後の練習の際、こう呼びかけた。
「県で優勝したからといって甲子園に行けるわけじゃない。俺たちが目指しているのはそこじゃない」
選手たちの引き締まった表情を見て、根建主将は安堵(あんど)した。
前評判通り、チームは関東大会でも順調に勝ち上がった。しかし最後に、浦学が大きく立ちはだかった。
県大会の再戦となった関東大会決勝。試合は序盤から息詰まる投手戦となり、延長戦に突入した。球場全体が緊張感に包まれる中、浦学の勝利への執念が、チームをじわじわと追い詰めていく。
そして延長十回裏、エースの関口明大投手(2年)がサヨナラヒットを浴びる。選手たちは、その場にうずくまったまま、しばらく動くことができなかった。
「信じられない」。楠本泰史副主将(2年)は試合後、つぶやいた。
「みんなに気の緩みはなかった。ただ、投手も野手も追い込まれた時の我慢が足りなかった」
根建主将は、勝敗を分けた「原因」をこう分析する。
ライバルに教えてもらった新たな「課題」。それを克服しようと、選手たちは今冬、猛練習を重ね、そして自らを追い込んだ。
「まだまだ精神的にもろいところはある」。岩井隆監督(43)の選手を見る目は厳しいが、それはチームがもっと強くなると信じているからだ。
浦学戦でベンチ入りした18人が大事に持っているものがある。試合結果を伝える新聞記事のコピーだ。「あんな思いは二度としたくない」。松本隼平選手(2年)は前を見据える。
合言葉は「てっぺんを取る」。夢舞台で大きな「花」を咲かせるつもりだ。
(毎日新聞埼玉版)