21世紀枠候補9校発表 朝霞選出ならず 第85回センバツ

 日本高野連は14日、第85回選抜高校野球大会(来年3月22日から13日間・甲子園)の21世紀枠候補9校を発表し、東日本大震災津波被害に遭ったいわき海星(東北=福島)などが選ばれた。記念大会となる第85回大会は同枠で例年より1校増の4校が選出される。出場校は一般選考と同じ来年1月25日の選考委員会で決まる。

 9校はいわき海星のほか、地区別に遠軽(北海道)日立一(関東・東京=茨城)五泉北信越=新潟)豊川(東海=愛知)堀川(近畿=京都)益田翔陽(中国=島根)土佐(四国=高知)門司学園(九州=福岡)。

 21世紀枠は2001年の第73回大会から導入された。過疎や部員不足といった困難な条件の克服など、戦力以外の特色を加味して選出。今大会からは秋季都道府県大会原則ベスト8以上としていた従来の選考基準を原則ベスト16以上に緩和した。地区ごとに1校が推薦され、第79回大会までは2校、第80回大会からは3校が選ばれている。

 出場校は候補9校から東(東海、北信越以東)と西(近畿以西)でそれぞれ1校を選び、残り7校から地域を限定せずに2校を選出する。

スポニチ

◇21世紀枠候補9校の横顔

■選考基準

(1)推薦校は原則、秋季都道府県大会のベスト16以上(参加128校以上はベスト32以上)から選出
(2)当該校の他の生徒や他校、地域に良い影響を与えた学校
(3)上記条件を複数校が満たし、いずれとも決定し難い場合は、過去の甲子園出場経験のない学校を優先し、さらに出場から遠ざかっている学校を選ぶ。

■選考方法

 第1次選考では、北海道を除く46都府県高野連が地域の毎日新聞支局などと協議し、1校ずつを推薦。さらに8地区で2次選考を行い、北海道地区と合わせて各地区計9校の候補校に絞り込んだ。来年1月の「21世紀枠特別選考委員会」で審議され、記念大会の今回は4校を選び、残り5校は一般推薦校に回る。

【プロフィルの見方】
(1)公私立の別(2)所在地(3)学校創立年(4)生徒数(5)野球部創部年(6)野球部員数(7)春夏の甲子園出場歴(8)秋季道府県大会の成績

◇北海道地区

 都道府県別推薦校=遠軽(えんがる)

 候補校=遠軽

 【プロフィル】(1)道立(2)遠軽町(3)1940年(4)578人(5)1947年(6)56人(7)なし(8)ベスト4

 <推薦理由>

 地域活性化に積極的に関わり、町内施設の除草作業などに全校生徒が参加。野球未経験者も入部してくる野球部は、文武両道の校訓のもとで午後7時完全下校の少ない練習時間の中、重点を絞った練習メニューや始業前1時間の朝練習など選手個々の創意工夫で効率化を図っている。

◇東北地区

 都道府県別推薦校=大湊(青森)、水沢(岩手)、石巻商(宮城)、大館工(秋田)、鶴岡南(山形)、いわき海星(福島)

 候補校=いわき海星

 【プロフィル】(1)県立(2)いわき市(3)1934年(4)383人(5)1960年(6)18人(7)なし(8)ベスト16

 <推薦理由>

 福島県内唯一の水産・海洋系高校で、東日本大震災では津波により校舎、施設、グラウンドが壊滅的被害を受けた。約2カ月に及ぶ遠洋航海実習が年3度あり、全員がそろって練習できないハンディを抱えながら、部員たちは震災の逆境も乗り越えて2年連続で秋季県16強入りを果たした。

◇関東・東京地区

 都道府県別推薦校=日立一(茨城)、真岡(栃木)、富岡(群馬)、朝霞(埼玉)、桂(山梨)、専大松戸(千葉)、高島(東京)、平塚学園(神奈川)

 候補校=日立一

 【プロフィル】(1)県立(2)日立市(3)1927年(4)876人(5)1947年(6)23人(7)夏1回(8)ベスト8

 <推薦理由>

 「人とのつながり」を重視し、ミーティング室の設置や社会人、大学との連携、美術館見学など人間味豊かな球児の育成に努める。東日本大震災後は大槌(岩手)の野球部との交流をはじめ、仮設住宅への弁当宅配、小学校の仮設校舎への引っ越し作業などボランティア活動に従事した。

◇東海地区

 都道府県別推薦校=大井川(静岡)、豊川(愛知)、長良(岐阜)、津商(三重)

 候補校=豊川

 【プロフィル】(1)私立(2)豊川市(3)1928年(4)1193人(5)1946年(6)89人(7)なし(8)準優勝

 <推薦理由>

 野球部員は毎朝7時の部訓斉唱に始まり、近隣住民への感謝の意を込めて、野球場周辺の落ち葉拾いや除草作業などの美化活動をはじめ、校門でのあいさつ運動、交差点での交通安全指導なども行いながら日々の練習に打ち込んでいる。オフシーズンの障害者施設慰問も恒例行事。

北信越地区

 都道府県別推薦校=五泉(ごせん=新潟)、諏訪清陵(長野)、富山東(富山)、大聖寺(石川)、鯖江(福井)

 候補校=五泉

 【プロフィル】(1)県立(2)五泉市(3)1921年(4)759人(5)1963年(6)28人(7)なし(8)ベスト4

 <推薦理由>

 「文武両道」の校風にならい野球部員の大学進学率も高く、補習にも積極参加するなど、部活動と授業の両立を図っている。部全体で進路希望実現に向けた雰囲気作りをするなど、何事も「全員」で取り組む姿勢が浸透しており、市主催イベントでは野球部が裏方として運営参加している。

◇近畿地区

 都道府県別推薦校=八日市(滋賀)、堀川(京都)、堺東(大阪)、北条(兵庫)、一条(奈良)和歌山東(和歌山)

 候補校=堀川

 【プロフィル】(1)市立(2)京都市(3)1908年(4)751人(5)1948年(6)41人(7)春1回(8)ベスト16

 <推薦理由>

 府内有数の進学校のため、7時間授業や放課後補習、学校からグラウンドまで自転車で30分以上掛かるなど難条件を抱えながら、特別待遇なしの真の文武両道を目指して高校野球らしい野球部を目指してきた。朝の校内外清掃、街頭あいさつは恒例。第28回大会(56年)で8強入り。

◇中国地区

 都道府県別推薦校=倉吉東(鳥取)、益田翔陽(島根)、玉島商(岡山)、呉商(広島)、豊浦(山口)

 候補校=益田翔陽

 【プロフィル】(1)県立(2)益田市(3)2006年(4)418人(5)2006年(6)37人(7)なし(8)優勝

 <推薦理由>

 益田産、益田工の統合で誕生した県内初の複合型専門高校。現場実習や各種資格取得の補習などに取り組むため、日々の少ない全体練習を休日の練習時間確保で補っている。創部時は連合チームとしてスタートしたが、全員が地元出身者という強い絆で結ばれ、今秋県大会初優勝を果たした。

◇四国地区

 都道府県別推薦校=観音寺第一(香川)、池田(徳島)、今治工(愛媛)、土佐(高知)

 候補校=土佐

 【プロフィル】(1)私立(2)高知市(3)1920年(4)912人(5)1947年(6)30人(7)春6回、夏4回(8)ベスト4

 <推薦理由>

 県有数の進学校。私学ながら特待生制度を採用せず、「全力疾走」「右文尚武(文武両道)」の伝統を守り続けながら、部員の半数以上が野球部合宿所で自治運営による厳格な寮生活を送る。過去10度の甲子園出場を果たした古豪だが、第65回大会(93年)を最後に遠ざかっている。

◇九州地区

 都道府県別推薦校=門司学園(福岡)、有田工(佐賀)、諫早(長崎)、熊本北(熊本)、大分西(大分)、小林(宮崎)、加治木工(鹿児島)、美里工(沖縄)

 候補校=門司学園

 【プロフィル】(1)県立(2)北九州市(3)2007年(4)500人(5)2007年(6)26人(7)なし(8)準優勝

 <推薦理由>

 門司、門司北の再編統合により開校した中高一貫校。日々の練習時間は2時間以内、高校入学者が男子約20人と少なく部員確保さえ困難な中、秋の福岡大会は決勝まで進出。練習後に監督、主将が協議して作る練習計画表を部員全員が把握することで、効率的な練習を実現している。

毎日新聞