気持ちで投げた738球 川口3年・高窪和希投手

 十回裏1死二塁、一打サヨナラのピンチ。迎える相手打者は三回に同点打を浴びた2番林崎龍也選手。松崎泰知捕手(三年)から「一塁は空いている」とサインが出た。

 腕が重い。今大会、1人でマウンドを守り、暑さで確実に体力は削られていた。七回あたりからは「気持ちで投げた」。

 それでも勝負にいった。だが、甘く入った2球目をセンターにはじき返され、サヨナラの走者が生還。返球のカバーに入ったバッターボックス付近で、崩れ落ちた。

 昨夏の新チーム結成後、3大会連続で初戦敗退した。試合中盤を乗り切る体力さえなく、あっけなく後輩にマウンドを譲り続けた。

 「悔しい」。毎日10キロ以上の走り込みで体力と下半身を強化し、春季県大会ではチームを4強に導いた。この日も、コーナーを突いた投球で、浦和学院の強力打線を翻弄(ほんろう)した。

 今大会は打線も奮起した。「みんなが支えてくれた。抑えたかった」。思いがあふれ、試合後は嗚咽(おえつ)が止まらなかった。だが、最後は「今までで一番良い投球ができた」と、持ち前の明るさを取り戻した。

 「全てを出し切った」という738球。初戦から6試合55イニングすべてを1人で投げ抜いた勲章だ。

東京新聞埼玉版)