埼玉栄、拙攻で流れ渡す 春季関東高校野球

 (23日・県営大宮)

 第4日は準決勝が行われ、埼玉栄は選抜大会4強の高崎健康福祉大高崎(群馬・推薦出場)に0−4で敗れ、初の決勝進出はならなかった。

 埼玉栄は二回、適時打とスクイズで2点を先制されると、三回にも先発本間がソロ本塁打を浴びた。八回にも1点を追加され迎えた九回、打線は1死満塁を築いたが、佐々木が一直。一塁走者神山が帰塁できず、併殺となった。

 もう1試合はこちらも選抜大会ベスト4の関東一(東京・推薦出場)が作新学院(栃木2位)に6−5でサヨナラ勝ちした。

 決勝は24日、県営大宮で午前10時開始予定。

◇経験糧に夏へ挑戦

 「相手は試合運びがうまかった」「大事な場面で落ち着いていた」。埼玉栄ナインは試合後に口をそろえた。選抜大会4強の健大高崎とは、確かな地力の差が存在した。

 象徴する場面が序盤にあった。埼玉栄は一回無死一、二塁と絶好の先制機を迎えた。だが打者浜崎がバントの構えからバットを引くと、二塁走者猪野が飛び出してしまい三塁で憤死。頼みの主軸浜崎、高橋も凡退し得点できなかった。猪野は「しっかり判断できていれば・・・」と悔やんだ。

 逆に相手は好機をしっかり得点につなげた。埼玉栄が逸機した直後の二回1死一、二塁、次打者が第1ストライクを逃さず右前適時打を放って先制すると、さらに一、三塁からスクイズを確実に決め、追加点を奪った。得意の先行逃げ切りに持ち込めず、細淵監督は「先制攻撃ができず、悪い形で点を与えた」と序盤の攻防を敗因に挙げた。

 三回には先発本間がソロ本塁打を浴び、八回には2番手板橋がダメを押される4点目。攻撃でも反撃を焦るあまりボール球に手を出し、二〜八回は二塁すら踏めなかった。

 だが、敗れはしたもののチームは昨秋の県大会8強から一冬を越え、関東4強まで躍進した。「正直、ここまで来られると思ってなかった」と細淵監督。主将の高橋は「春の経験を生かし、劣勢でも追い付ける力を付けたい」と力を込める。チームの合言葉は“強い栄を取り戻す”。本番の夏へ、その下地は整った。

◇鈴木、孤軍奮闘3安打

 器用さとしぶとさを買われて2番に打順を上げた遊撃手鈴木が3安打と孤軍奮闘。細淵監督の期待に応える活躍にも「チームの負けが一番悔しい」と唇をかみしめた。

 一回無死一塁からバスター打法で左前へ教科書通りの打撃。六回にも「強く振ると決めていた」と初球を狙い通りに左前へ運ぶと、九回先頭ではバント安打できっちり出塁。「意表を突けた」と納得の表情を浮かべた。

 守備でも三回2死三塁の場面で、四球から直接二塁を狙った打者走者の揺さぶりに慌てることなく、三塁走者の本盗を阻止。「ホームで刺せてよかった」と胸をなで下ろした。

 春から最上級生としての自覚が芽生え「守りも攻めもよくなった」と細淵監督。「エラーをしない守備から攻撃につなげたい」と意気込む攻守の要が、夏もチームをけん引する。

埼玉新聞