川口、逆転で徳栄破る 春季高校野球県大会

 (25日・県営大宮ほか)

 第2日は2回戦の計8試合が行われ、3連覇を狙った花咲徳栄、昨秋4強の聖望学園がともに敗れる波乱があった。

 川口は1点を追う八回に佐野、山口の連続適時打で花咲徳栄に2−1で逆転勝利を収めた。昌平は延長十五回の末、聖望学園に2−1でサヨナラ勝ち。選抜大会8強の浦和学院は九回に3点差を追い付かれたが、竹村のサヨナラ打で上尾に5−4と競り勝った。春日部共栄は15安打12得点の猛攻で川越に圧勝した。

 松山は吉田のスクイズで挙げた1点をエース右腕岡本が守り切り本庄一を完封。所沢商は2点を追う九回に3点を奪い、久喜北陽に逆転サヨナラ。立教新座、秀明英光もベスト16進出を決めた。

 第3日は県営大宮など4球場で2回戦の残り8試合を実施し、16強が出そろう。

◇内角えぐり王者粉砕 川口

 川口がしぶとい花咲徳栄のお株を奪う終盤の逆転劇で金星を獲得。4月に就任したばかりの鈴木監督は、「リードしてからも落ち着けていた」と選手たちの頑張りに目を細めた。

 勝利の立役者はエース高窪だ。「真っすぐが最高のコースに投げられた」。針の穴を通すような抜群の制球力で、ぐいぐいと内角をえぐった。被安打5で1失点。あれだけ内角を突いたのに四死球ゼロは立派なもの。女房役の松崎が「気合も入っていて文句なし」と大絶賛すれば右腕も「気持ち良かった」と飛びっきりの笑顔を見せた。

 真っ向勝負を挑むエースを援護するため、ナインの心も一つだった。

 先制された直後の八回。1死から代打小林晴が四球で出塁すると続く佐野が「何としても打ちたい気持ちだった」と右翼線への三塁打で同点。続く山口は「いつも抑えてくれる高窪のために」。直球に詰まったが、執念で左前にぽとりと落とし、決勝点をもぎ取った。

 応えるように八、九回を三者凡退で抑え、歓喜をもたらしたエースは「目標は関東出場。チャレンジャーとしてベストを尽くす」と、仲間とともにさらなる高みを目指す。

◇終盤に悪夢3連覇ならず 徳栄

 球場を覆う“まさか”の雰囲気が現実となった。3連覇を狙った花咲徳栄は川口に逆転負け。岩井監督は「まだまだ若い。こんなことでは勝てない」とおかんむりだった。

 川口のエース高窪の内角を突く投球になす術もなかった。1〜3番、6、7番が無安打で出塁もゼロと、花咲徳栄本来のつなぐ野球は不発で「簡単にアウトになっていたら話にならない」と指揮官もあきれ顔だった。

 スタメンに2年生が6人と若いチームに、岩井監督は「2年生の気が抜けているところがある」と警鐘を鳴らす。昨夏の甲子園メンバーの4番藤原も、「2年生の意識を高めなければ」と一丸での出直しを誓った。

◇苦しみながらも底力 浦学

 浦和学院は、約1カ月ぶりの公式戦に苦戦しながらも勝ちきった。

 持ち味のフルスイングは影を潜め、当てにいくような打撃が目立った。守備でも、1点差に迫られた九回2死二塁から遊ゴロを竹村が一塁へ悪送球し、同点に。森監督は「勝ちにいくんだ、という意識を立て直さないと」と気を引き締める。

 それでも、サヨナラ勝ちできたのは関東、全国で培ってきた底力があったからだ。捕手の林崎は「勝てたことは大きい。反省を次に生かしたい」と意気込みを示した。

◇9回2死から執念 上尾

 最後はサヨナラ負けしたものの、上尾が選抜大会8強の浦和学院に最後まで食い下がった。

 1−4の九回、2死走者なし。土壇場で伝統のユニホームが意地を見せた。遠藤の中前打、五十嵐が四球でつなぐと田中が「内角低めを全力で振る」と、狙い球を逃さず右翼フェンス直撃の適時二塁打で1点差。さらに菊池の遊ゴロが敵失を誘い同点に追いついた。

 「調子が良かった」というエース右腕菊池は、体力が落ちた中盤に4点を失ったが、四隅を丁寧に突く投球が光った。

 ただナインにあったのは、互角に戦えた充実感よりも負けた悔しさだ。主将の遠藤は「勝たなきゃいけなかった。負けたら意味がない」。高野監督も「勝つ厳しさを感じている。夏に向けて勝ちきれる野球をやらないと」と視線を先に向けた。

◇金星呼び込んだ右腕斉藤の218球 昌平

 最後までもがき続けた昌平が、3時間35分に及んだ第4シード聖望学園との激闘を制して16強進出。塚本監督は「やってくれると信じていた」と賞賛を惜しまなかった。

 先発斉藤は高めの釣り球で打ち気を誘い、14回途中まで218球を投げて8安打1失点。十五回表2死一、三塁のピンチでマウンドを託された山崎も空振り三振で斉藤の力投に応えた。

 直後の十五回裏、「変化球をしっかり待てた」と4番田浦の二塁打などで1死一、三塁の好機を作ると、梶原が「チームで徹底した低い打球」と叩きつけた遊ゴロが、悪送球を誘って田倉がサヨナラの生還を果たした。

 「みんなでもぎ取った1点」と満面の笑みを浮かべる殊勲の斉藤。主将の梶原は「一番の勝因はチーム力」と誇らしげだった。

◇強打の自負裏目、夏へ再出発誓う 聖望

 「強力打線」の自負が17飛球と裏目に出た第4シード聖望学園がまさかの初戦敗退。岡本監督は「負けはしないと思っとった。(打撃に)自信があるから振りに行ってしまう。高めを打つなと言っても言うことを聞かん」と肩を落とした。

 3回途中から登板し、気迫の投球を見せた2年生エース川畑も、最後は味方のエラーにがっくりと崩れ落ちた。主将の小林は「今はどうすればいいか分からない。足元から見詰め直したい」と、ノーシードで迎える夏へ再出発を誓った。

◇エースの木下、5安打完封勝ち 立教新座

 5安打完封の快投を見せた立教新座のエース木下。「相手を気にせず、自分のピッチングをするだけだった」と緩急自在の投球で、強打の栄北打線を手玉に取った。高林監督も「前回よりも良くなっている」と成長ぶりを高く評価した。

 「ただ投げていた」と振り返る秋からフォームを改造。冬場徹底的に強化した下半身を生かし、長いイニングを投げ抜く余裕も生まれた。3安打1打点と投打で活躍した木下は「次も勝たないと意味がない」と力強く一戦必勝を掲げた。

■2回戦

【県営大宮】

上尾
000010003=4
000100121=5
浦和学院
【上】菊池−田中
【浦】山口−林崎
二塁打 小山、田中(上)笹川、石橋、西岡(浦)

春日部共栄
93000=12
00000=0
川越
(5回コールド)
【春】青木、片倉、倉井−田村
【川】亀岡、永井−松崎
三塁打 村山(春)
二塁打 三浦、藤谷、青木(春)

川口
000000020=2
000000100=1
花咲徳栄
【川】高窪−松崎
【花】高橋航、上田、中川−若月
本塁打 藤原(花)
三塁打 佐野(川)

上尾市民】

立教新座
000030001=4
000000000=0
栄北
【立】木下−龍造寺
【栄】細野−大久保
三塁打 藤本(立)
二塁打 木下(立)稲元(栄)

聖望学園
000001000000000 =1
010000000000001x=2
昌平
(延長15回)
【聖】小林、川畑−加藤、寺田
【昌】斉藤−梶原
二塁打 田浦、小島、菊地(聖)田倉、梶原(昌)

久喜北陽
100000010=2
000000003=3
所沢商
【久】林−木暮
【所】渡会−金浜
三塁打 金浜(所)
二塁打 渡辺、尾上(久)

【熊谷公園】

松山
001000000=1
000000000=0
本庄一
【松】岡本−岩間
【本】萩原−阿部航
二塁打 市川(松)萩原(本)

秀明英光
000041001=6
210000001=4
与野
【秀】中田、小島−永田
【与】田中−内藤
三塁打 二宮(与)
二塁打 岩崎(秀)神、中村(与)

埼玉新聞