史上初、私立が8強独占 今大会を振り返って

 昨年と同数の159チームが参加した今大会は「がんばろう日本」を合言葉に、東日本大震災からの復興を誓って開幕した。高校球児のひたむきなプレーが感動を呼び起こし、人々に勇気や希望を与える。見る側もやる側も野球がある日常のありがたみを再確認した。

 8強は史上初めて私立が独占。この流れが来年も続くとは言えないが、象徴的な出来事だ。埼玉は過去10年、浦和学院春日部共栄聖望学園花咲徳栄本庄一が甲子園切符を分け合っている。今大会はこのうち4校がベスト4の座を占めた。そういう意味では順当だったと言える。

 優勝した花咲徳栄は走攻守が基本に忠実で手堅い戦いぶりを見せた。大塚、田中ら昨夏の準優勝メンバーに加え、エース北川が一本立ち。初戦で富士見にサヨナラ勝ちして勢いに乗り、浦和学院春日部共栄を破った。

 準優勝の春日部共栄は6年ぶりの頂点にあと一歩届かなかったが、久しぶりにベスト8の壁を越えた。エース竹崎を軸に、小泉、鎌田らが支える打線は魅力的だった。

 春夏連続甲子園を狙った浦和学院は2年連続準決勝敗退。3年連続で夏の栄冠を逃した。選抜大会のエース佐藤が不調で投手陣が整備できず、小林、沼田を中心とした打線も援護できなかった。

 昨年王者の本庄一は飛び抜けた選手こそいないものの、例年のようにしぶとさが健在で、終盤の逆転勝ちが4試合と接戦に強かった。岡野、設楽、田村ら昨夏の甲子園メンバーが引っ張った。

 8強では狭山ケ丘が印象的だった。エース桜井岳、打者は山田ら好選手がそろい、22年ぶりの準々決勝に進んだ。初のベスト8に入った秀明英光はエース高橋、武南は左腕小川の力投が光った。

 Bシード浦和実は早川、鈴木の2年生投手が踏ん張ったが、準々決勝で敗れた。春の県大会で準優勝し、27年ぶりの甲子園出場を狙ったAシード上尾は左腕伊藤が復活したが、5回戦で狭山ケ丘にサヨナラ負けした。

 小川が山村学園にサヨナラ勝ちした開幕戦は好ゲームだった。強豪と比べて技術面での差こそあれ、白球にかける情熱は決勝進出校も1回戦敗退校も、何ら変わりがないことを教えてくれた。

埼玉新聞