「夏は気持ち」壁破る 春日部共栄−狭山ヶ丘

◇鎌田「4番の仕事」目覚めの初アーチ 春日部共栄

 眠れる大砲が、ついに覚醒した。4番鎌田が公式戦初本塁打の先制ソロアーチを含む4安打の活躍。「4番の仕事ができた」と笑顔を見せた。

 0−0の四回、狭山ヶ丘エース桜井岳の甘く入ったスライダーを狙い打ち。試合前に対策を練り「抜ける変化球を狙っていた」。バットを豪快に振り抜き、白球を左翼席に運んだ。

 単打を挟んだ八回の打席では先頭で左翼越え二塁打。その後の2得点につなげ試合を決めた。

 「パンチ力があって足もある。将来いい選手に育てないと」と本多監督が見込んだ逸材。1年秋から4番に座るが、春の大会は不振でスタメンを外れた。「絶対4番に戻ってくる」。そう誓って練習を繰り返してきた。

 一戦ごとに力をつける2年生。「打撃は絶好調」という主砲のバットが、次戦もチームを勝利へ導く。

◇「夏は気持ち」壁破る 春日部共栄

 苦しかった分だけ喜びは大きかった。最後の打者を三振に打ち取ると、春日部共栄の竹崎はガッツポーズ。狭山ヶ丘・桜井岳との息詰まる好右腕対決を被安打10ながら1失点で投げ勝ち、「夏は気持ちの勝負。攻めの投球だった」と胸を張った。

 立ち上がりから球が高めに浮き、ピンチの連続だった。四回まで毎回得点圏に走者を背負い、2点リードの五回には自らの失策と2四球も重なり、犠飛で1点を失った。

 実はこの回の先頭打者に四球を与えた際、右ふくらはぎをつった。それでも「自分が崩れたらチームも崩れる」と責任を持って後続を抑えた。六回1死一、三塁では自身がライナーを好捕し併殺に打ち取った。

 昨秋の関東大会準々決勝、勝てば選抜出場が近づく水城(茨城)戦で同点三塁打を浴びた球を悔やんでいた。「勝負どころの直球が甘かった。それは絶対になくそう」と普段の練習から打者を立たせ、走者を意識して投げ込んできた。この日は警戒していた相手の4、5番にも厳しいコースで真っ向勝負を挑んだ。

 チームの準決勝進出は優勝した2005年以来6年ぶり。竹崎は「自分が引っ張って頂点を目指す」と気合十分。本多監督は「1点差や走塁ミス、あと1本が出ずに負けてきた。よく選手が踏ん張っている」。ここ5年で4度はね返されてきた準々決勝の壁を越え、とうとう“共栄”の波が来た。

◇真っ向勝負も「悔しい」 狭山ヶ丘

 「ここまで勝ち上がってこられたのは彼のおかげ」。熊谷監督の言葉が全てを物語る。初の4強を前に一歩及ばず「悔しい」と目を真っ赤にした狭山ヶ丘の桜井岳だが、エースの名に恥じない見事な投球を見せた。

 春季県大会で敗れた春日部共栄に燃えないわけがない。真っ向勝負だ。見とれてしまいそうな、しなやかなフォームから内外にキレのある直球と変化球を投げ込む。打たれても表情を変えない。味方がエラーしたときは「気にするな」と声を掛け落ち着かせる。精神的にも大きくなったエースは成長の足跡を残した。

 浦和実に2−6で負けた昨秋の県大会がエースの心に火をつけた。この冬は、与えられたメニュー以外にも黙々と走り込み、横瀬町から片道1時間半かけて通う電車の中では野球の本を読んだり、ボールを握って指で遊ばせたり。誰にも負けない投手になりたい一心でこの2年半を注ぎ込んだ。

 大学でも大好きな野球を続け、いずれはプロに行くつもりだ。「半分は納得できる投球だった」。もう半分はこれからの成長の糧にする。

◇8強入りの立役者 “劇的”再現ならず 狭山ヶ丘

 上尾戦で劇的なサヨナラ安打を放って22年ぶりの8強入りの立役者となった大森が三振に倒れ、ゲームセット。サヨナラの再現は果たせなかった。

 九回のチャンスに打席が回ってきたのは上尾戦と同じ。前回は初球から積極的に振り抜いてサヨナラ安打となったが、今回は初球のストライクを見逃し。1ボール2ストライクと追い込まれ、最後は見逃し三振となった。

 「初球を見逃した時にタイムをかけて落ち着かせればよかった。私の責任。申し訳ない」と自らを責める熊谷監督。しかし大森は「相手はすごい投手。完全に力負けです」。悔し涙を流しながら竹崎投手の好投をたたえた。

埼玉新聞