狭山ヶ丘、上尾下す 初の私立8強独占 あす準々決勝

(22日・県営大宮ほか)

 第10日は3球場で5回戦8試合が行われ、史上初めて私立校がベスト8を独占した。秀明英光はCシード大宮東に8−6で逆転勝ちし、初の8強入り。狭山ケ丘はAシード上尾に2−1でサヨナラ勝ちし、22年ぶりの準々決勝に進出した。武南は朝霞を6−3で下し、9年ぶりの8強に名を連ねた。

 昨年王者の本庄一はDシード鷲宮、Bシード浦和実は川越東に競り勝った。Cシード春日部共栄聖望学園に逆転勝ち。Aシード花咲徳栄、Dシード浦和学院は快勝した。

 第11日は24日、休養日を挟み、県営大宮など3球場で準々決勝4試合が行われる。

◇エース北川、投打にキラリ 花咲徳栄

 ミスから二回に1点を奪われたものの、エース北川が8回を好投。南稜に追加点を与えなかった。

 2日間の雨天順延の影響もあり、「調子が良かった。いつでも登板できるように準備していた」と北川。ストレートが走り、制球も安定。計6安打を与えたがいずれも散発。連打を許さなかった。「コーナーをどんどん突いた。好打者の1、3番打者を抑えたのが大きかった」と捕手白石も納得の表情。

 2安打1打点と打撃も好調だった北川。「打てたのはたまたまです」と軽く笑いとばし、「一戦一戦大切に勝ち抜き、甲子園を目指したい」と決意を込めた。

◇壁破れずも意地 南稜

 昨夏に続き、5回戦で敗退。遠山監督は「警戒していた足を封じられなかった。選手はよく頑張ったが、私の指導力不足」と下を向いた。

 許した盗塁は4個。試合前にはバッテリー間で対策を話していたが、「盗塁を意識して直球を狙われるのが嫌だった。投手には打者に専念してほしかった」と捕手の野川が変化球を要求。そこを突かれた。それでも、八回には大塚の盗塁を刺したバッテリー。「最後は気持ちで思い切りいった」と意地を見せた。

 ベスト16の壁を破れなかったが、主将の栗田は「先制点を取って楽しくやる自分たちの野球はできた。来年は自分たちを越えてほしい」と後輩に託した。

◇中山好投「頼もしい」 浦和学院

 五回に6連打で6点を奪い、4回戦と同じように一気に試合を決めた。頂点を目指す常勝軍団にとってこの5回戦までは前半戦。優勝までのあと3試合が後半戦といったところか。

 その後半戦に向けて、背番号1の中山が好投したのは明るい材料だ。左腕は「腕を振って変化球を低めに投げられた」と7回を2安打無失点。立ち上がりこそ制球が定まらず余計な四球を出したものの、得意のカーブと鋭く走る直球でピンチらしいピンチは六回1死二塁の一度だけだった。

 森監督は「中山はどの球も思い通りに投げていた。これからうちは総動員。頼もしい姿を見せてくれた」と賛辞を贈った。

◇完敗も成長示した夏 成徳大深谷

 秋、春と県大会に進めなかった悔しさを胸に刻み、ベスト16まで駒を進めた夏が終わった。

 前半は強豪浦和学院を相手に健闘。二回、2本の安打などで1点を許したが、三回には併殺を奪う好守をみせた。

 ところが五回に暗転。6連続安打に失策が重なり6失点。泉名監督は「自分たちの野球をやろうと臨んだがやはり力不足。よく頑張った」と選手たちをねぎらった。

 「ありがとう。よく頑張った」。試合後、涙を流しながら抱き合う選手たち。主将の森谷は「悔しいけど全力で戦った。来年こそ甲子園を目指してほしい」と後輩に期待した。

◇力投に応えるサヨナラ 狭山ヶ丘

 同点で迎えた九回、大森の鋭い打球が右翼線に落ちると、一塁走者の山田が二塁、三塁と駆け抜け、サヨナラのホームに滑り込んだ。殊勲打のヒーローは「こんなに気持ちいいのは初めて」とナインと喜びを爆発させた。

 二回までに両チームが1点ずつを取り合うと、後は今大会屈指の右腕・桜井岳と上尾の左腕・伊藤の緊迫した投手戦。桜井岳は「自分のミスで失点したので、何とか踏ん張ろうと思った」と懸命に腕を振る。七回には「少し狙った」と三者三振で小さくガッツポーズ。味方が点を取れないことに気持ちが切れそうになるが、「もう少し辛抱しろ」とナインから励まされ、三回以降は三塁を踏ませない投球でリズムをつくった。

 迎えた九回。先頭の山田が右前打で出塁すると、打席にはこの日無安打の大森。熊谷監督は「安打は出ていないが、タイミングは合っている」と「打て」のサイン。それに応えるように「何も考えず、後ろに回そう」と初球からバットを振り、決勝打につなげた。

 今大会は所沢商、深谷商、上尾と、甲子園出場経験校を次々と撃破。チームの勢いは加速するばかりだが、熊谷監督は「相手を意識することなく、自分たちの野球をやるだけ」と引き締める。次戦は、春の県大会で敗れた春日部共栄。力投のエースは「自分の投球をすれば勝てる。何としても借りを返したい」とリベンジに燃えていた。

◇熱い投球「悔いなし」 上尾

 27年ぶりの甲子園出場へ、伝統校の命運を握った背番号3の左腕が最後に力尽きた。完投しながらサヨナラ負けした上尾の伊藤は「一人一人が相手の方が上回っていた。『負けた』って感じです」と敗北を認めた。

 大会屈指の右腕、狭山ヶ丘の桜井岳と互いに譲らぬ熱のこもった投げ合いは、同点のまま最終回へ。しかしそれまでの熱投とは裏腹に、幕切れはあっけなかった。

 九回、先頭の山田への初球、得意のスクリューを右前に運ばれると、続く大森には初球の直球を捉えられ、右翼線へサヨナラ二塁打を浴びた。わずか2球での決着。「きょうの投球は悪くなかったが、最後だけ高めに浮いた。もうちょっと低ければ」。

 2008年の北埼玉大会で準優勝した上尾に憧れて入学。1年夏からエースナンバーを背負い、常に中心選手として活躍した。しかし、昨夏の大会前に左肩を故障。昨秋の大会前には腰痛に悩まされ、ほぼ1年を棒に振った。「(3年の)夏は諦めていたぐらい」だった。

 それでも今春の県大会で準優勝し、24年ぶりに関東大会に出場したチームの中で、同じ左腕の三宅と競り合いながら、最後の夏に間に合わせた。「力がない中でこれだけ戦えた。気持ちよく投げられて悔いはない。上尾の野球が好きだし、ここでやれたことは誇り」。ナインにも伊藤にも涙は一切ない。伝統校復活への夢は後輩に託された。

◇創部27年目 歴史刻む 秀明英光

 九回表1死満塁。高橋が大宮東の4番高山亮を投直に仕留め、一塁に送球。併殺が完成するとベンチから仲間が飛び出した。秀明英光が創部27年目で夏8強の扉を開けた。

 秋山監督が「おえつの連続だった」という試合は、終盤激しく動いた。3−4回の八回。1死満塁で遠藤岳が右翼線に逆転の適時二塁打。「後ろにつなぐことだけを考えた」。さらに赤尾、遠藤貢にも適時打が生まれた。

 先発の高橋は大宮東の強力打線に立ち向かった。九回一打逆転の場面を迎えたが「思い切り投げれば何とかなる」と持ち前の強気で切り抜けた。野手陣の笑顔も支えとなった。

 秀明英光には転機となる試合がある。春の県大会初戦の桶川戦で同点とした直後に失策から乱れ敗戦。「あきらめの精神」を払拭すべく飛球でも必ず全力疾走など、野球への取り組み方を正した。

 前日の埼玉栄に続き甲子園出場経験校を撃破。チームの歴史も塗り替えた。主将の赤尾は「名前じゃない。勝った方が強い」。準々決勝では浦和学院に真っ向勝負で挑む。

◇譲らぬ攻防 紙一重 大宮東

 序盤の投手戦から一転、中盤から点の取り合いに発展。両者とも一歩も引かない攻防を繰り広げて敗退した。吉本監督は「もっと勝たせてあげたかった」と悔やむ。夏に向け、どんな展開でも勝利につなげられるように準備したが、「読みと判断が甘かった」と肩を落とした。

 六回に逆転3ランを放って九回、最後の打席に立った高山亮は「必ず同点にするんだ」と臨んだが併殺に終わった。「悔しい。絶対忘れられない打席になった」と目に涙をにじませた。先発の渡辺は「早くピンチを切り抜けたい気持ちが前に出過ぎた。投げ急いでしまった」と涙を拭いた。

◇板倉、痛烈勝ち越し打 春日部共栄

 1−2の八回に4安打で一挙3点を奪い、がっぷり四つの聖望学園を一気に寄り切った。1死二、三塁で痛烈な逆転中前打を放った板倉は「カウントを取りにくる直球を狙っていた。前に落ちてくれと思って走った」と、目の覚めるような殊勲打に笑顔がはじけた。

 3−2とした後の2死一、二塁からは、佐々木が左前打で畳み掛け、4点目。本多監督も「あの1点が大きかった」と絶賛する活躍が、勝利を大きく呼び込んだ。

 一回に2点を奪われて以降、エース竹崎をもり立てたのが捕手の佐々木だった。2度の二盗阻止や、コーナーを巧みに突く好リードが光った。佐々木は「竹崎は球を低めに集めれば大丈夫。思い切りいこうと声を掛けた。4点目の適時打は無心で打った。よく覚えていない」とにっこり。エースを打撃で援護できた充実感が表情を覆った。

 低めを意識した竹崎は三回以降、被安打1の好投で、聖望打線から3者凡退の山。竹崎は「佐々木を信じて投げた。あいつが打つとやっぱり違う」と、女房役の攻守の活躍を喜んだ。

◇笑顔のマウンド貫く 聖望学園

 「この仲間ともっと野球がしたかった」。エース滝瀬は試合中、笑顔を忘れなかった。

 「共栄に勝ってヒーローになろう」。対戦が決まるとチームメートとこんな言葉を交わした。春日部共栄は昨秋の県準優勝。一方の聖望は秋、春とも結果を残せていなかった。

 いざ5回戦。一回の攻防で2−1と試合の主導権を奪った。「相手は強い。最初から飛ばした」。滝瀬は188センチの長身から勢いのある球を投じた。三、四回には三塁に走者を背負ったが、何とかしのいだ。

 1点リードでたどり着いた八回。「気持ちの面の疲れが出たのかもしれない」。球が浮き、春日部共栄打線につかまった。4安打3失点。「八回に同点ではなく、逆転されたところにうちの負けがある。紙一重の勝負だった」と岡本監督は振り返った。

 「自分が打たれたらチームは負ける」。仲間との野球は笑顔でと決めていたが、背番号1の重みを背負ってきた滝瀬は試合後、せきを切ったかのように涙をこぼした。

◇またも劇的シード撃破 本庄一

 もはやこの夏の恒例ともなった逆転勝ちで、Dシード鷲宮をも撃破した。須長監督は、「このチームでベスト8か。夢のようだね」と笑いが止まらなかった。

 球威のある鷲宮の増渕に対し序盤は球を多く投げさせ、じわじわ追い詰めた。六回に3−4と逆転を許したが1点差は想定内。その裏、2死満塁から柳田がしぶとく左前に運び同点。続く志和が三遊間にゴロを転がし、敵失を誘い決勝点を奪った。

 3安打のうち内野安打が2本の田村は「バットにボールをぶつけるだけ」と誇らしげ。追い込まれれば全員がバスターに切り替え、徹底してボールに食らい付いた。

 これで6年連続の8強入り。須長監督は「5試合目を戦えることが喜び」。今年も無欲のノーシードなだけに、上に行けば行くほど怖い存在だ。

◇因縁対決 失策響く 鷲宮

 2年前に8強入りを阻まれた本庄一との因縁の対決は、絵に描いたようなシーソーゲームとなった。四回に先制したものの、間髪入れず逆転を許した。六回には深井の中前適時打で4−3と勝ち越したが、またも直後に2点を失った。

 「点が入れば試合が動く」と柿原監督は口すっぱく引き締めていた。選手たちも理解していたはずだったが、勝負どころで失策が出るなど、先発の増渕を援護できなかった。同監督は「そういう部分でうちより上」と本庄一の勝負強さをたたえた。

 2打点の伊藤は「1年の時はスタンドで応援していた。先輩の敵討ちをしたかった」と肩を落とし、主将の遠藤は「(増渕)雅也は一番いい投手だと思っている。勝たせてあげられなかったのが悔しい」と涙を浮かべた。

埼玉新聞