大きな兄追い燃焼 鷲宮・増渕投手、5回戦で敗退

 鷲宮高OBでプロ野球ヤクルトで活躍する増渕竜義投手を兄に持つ、今大会屈指の左腕、増渕雅也投手(鷲宮高3年)が22日、上尾市営球場であった5回戦で昨年王者の本庄一高に敗れ、姿を消した。「大きな兄」と向き合い、ひたむきに白球を投げ抜いた夏に幕が下りた。

 この日、6回を投げ切り降板した。六回の守りで逆転を喫し、七回から中堅手に移った。青々とした芝生の広がる外野。試合終盤、そこで申し訳なさそうにプレーした。

 「自分はマウンド上でもスタンドの声援は聞こえる方ですが、センターからでもよく聞こえてくるんです」と増渕。マウンドを託した投手も打たれ、チームに盛り返す余力はなかった。

 兄竜義さんは2006年夏、決勝で浦和学院に惜敗している。その弟として1年生の頃から、大会があれば注目を集めた。

 「(兄が)重荷にはなることはなかった。むしろ燃えた」。兄の存在について問われると、より声を張って、負けん気たっぷりに言い返す。4回戦の蕨戦で好投を演じた試合後、「相手(兄)の存在はデカイんです。だからこそ負けられない」とも。

 今大会は1番打者としてもチームをけん引してきた。「1人で打って走っての野球ができる選手」とは柿原実監督評。蕨戦で左手の中指に異変を感じ、この日の試合中にマメがつぶれ、それが降板につながった。「指は気になっていたが、託せるのは雅也しかいないから」とは主将で女房役の遠藤隼人捕手(3年)。

 22日朝、1通のメールが増渕投手の携帯電話に届いた。「絶対に負けるんじゃねえぞ。弱くても甲子園に行け」(竜義さん)。「分かってるよ」とメールを送り返した。

 今大会に入り、竜義さんとは連絡を取り合っていなかったはず。「大一番、きょうの試合を気にしてくれていたんでしょか」

 高校卒業後は社会人野球を進路に定める。「大学で野球を続けても、家計で親に負担をかけると思うし」。いずれ「野球でお金を稼いで親孝行したいです」と頼もしい。

 帽子のツバには「目指すは頂点」と書き込んで臨んだ夏。尊敬する兄に追い付け、追い越せ、そして頂点に立て。

埼玉新聞