師弟の挑戦続く 立教新座・高林監督 初采配の夏終わる

 市営大宮球場で18日に行われた南稜−立教新座は、Dシード立教新座が3−6で南稜に惜敗。冬に就任した高林孝行監督(43)の初采配の夏が終わった。日本代表としてアトランタ五輪で銀メダルを獲得。華々しい経歴を誇るOB監督は試合後、「悔しい思いしか残らない」と、胸の内に燃え盛る闘志を隠し切れない。選手として自身がつかんだ1985年以来の甲子園出場に向け、指揮官としての戦いは始まったばかりだ。

立教新座・高林監督 初采配の夏終わる

 “夏の初陣”を特別な思いで見詰める男がいた。85年甲子園出場時の監督で、現在、立教新座中学校野球部監督も務める大野道夫部長(62)だ。「甲子園出場を果たすには、選手をどう育てていくか。中学、高校の連携がどうしても必要になる」。強調するのは、立教新座を常時、強豪校に押し上げる方策だ。

 大野部長は2001年まで監督を務め、その後9年間は大学生監督が4人続いていた。

 大野部長にとっても、教え子の監督就任は驚きだった。「日本代表で素晴らしい実績を残した選手。大学の監督になると勝手に思い込んでいた。就任の話を聞いた時、『その手があったか』ってね」とにっこり。甲子園を経験した師弟の“復活”だった。

 試合は、二回に4点を勝ち越され、終始追う展開に。六、八回に1点ずつを返すが、最後まで追い付けなかった。高林監督は「好機にもう1本が出なかった。力負け」と敗戦の弁。高校以来の夏の大会に「余裕のある試合はない。3年の夏はどこもしっかりしたチームをつくってくる」と、厳しさを実感していた。

 高林監督は、家業の書店経営と二足のわらじで練習に足を運ぶ日々。土日は途中で引き上げることもあるが、週5日は選手の指導に当たってきた。1番二塁手で活躍した高校時代そのままに、走塁や、初球から思い切りバットを振る意識など、そつのない野球を徹底。山本哲也主将も「すごい人なので就任はびっくりした。怒ると怖いけど、選手の中に入り込んでくる面白い人」と信頼も厚い。

 日々の指導について、大野部長は「選手時代はもっと勢いがあった」と冗談交じりに話すが、「的確に選手の力を見詰め、対戦相手のデータ集めも余念がない」とその力量には目を細める。

 初戦、2戦目とコールドで勢いづいたが、夏の16強の壁は厚かった。試合後、山本主将は「甲子園が最高の恩返しになると思っていたのに」と声を詰まらせた。敗れても粘り強い戦いぶりに、大野部長も「安心して任せられる」と太鼓判を押した。

 「甲子園出場」。ただ一つの目標を掲げ、“師弟コンビ”の挑戦は続く。

埼玉新聞