腕の変調克服 4番の意地 大宮西・西浦和平右翼手

 「打ってやる。絶対にあきらめるな――」

 右翼の位置からマウンドのチームメートを思った。味方投手が初回に相手打線につかまって大量7失点。投手の心情や悔しさを誰よりも知るだけに、何とか打撃で援護したかった。

 小学生の頃から投手一筋だったが、昨夏に右腕に異変が生じた。鉛筆を持つとしびれ、電車のつり革が握れない。6施設目となる群馬県のスポーツ医療専門病院で原因がようやく判明した。筋肉と骨の間の神経が圧迫される「胸郭出口症候群」。発症率は2%ほどという。

 「もう一度投げたい」との思いで、昨冬に手術を受けた。リハビリはコップを持つことから始まった。投球できるようになったのは今春。投手に復帰できるまで外野へコンバートされた。慣れない守備は監督らが1対1で指導してくれた。「チームの力になりたい」と打撃力を高めるため1日500回以上素振りした。配球を読む鋭さや長打力を買われ、「4番」に抜てきされた。

 初戦は3安打3打点。この試合はまさかのコールド負けを喫したが、四回に死球で出塁し、ただ一人ホームを踏む意地を見せた。

 最後の夏に背番号「1」を付けることはかなわなかった。それでも、「常に4番としてチームの逆境をどうはね返すかだけを考えていた」。

(読売新聞埼玉版)