花咲徳栄「夏に甲子園で」、岩手の高校野球部に用具贈る

 今春の埼玉県大会で優勝した花咲徳栄の野球部の主将らが27日、東日本大震災で被災した岩手県立高田高校の仮校舎(大船渡市)を訪れ、バット30本とボール10ダースを贈って激励した。両校の部員は握手を交わし、「夏に甲子園で会おう」と約束した。

 両校の交流は数年前から始まった。花咲徳栄コーチの村上直心(なおし)教諭(35)が岩手県立水沢高校で野球部員だった時、高田の佐々木明志(あきし)監督(47)が監督を務めており、年末には合同合宿を開くなど交流を続けてきた。

 大地震があった3月11日、津波陸前高田市にあった高田の3階建て校舎をのみ込んだ。校舎裏手のグラウンドで練習していた部員は全員無事だったが、家族を失ったり、自宅を流されたりした部員もいた。

 「高田に支援をしたかったが、春の大会が目前に迫り、何もできない無力感にさいなまれた」と花咲徳栄の岩井隆監督(41)は当時を振り返る。そんな思いを選手に伝え、自分たちに何が出来るか問いかけた。「野球ができることは当たり前じゃないんだ。それを分かった上で野球をやる覚悟はあるか」。それ以来、練習の雰囲気は変わり、選手は弱音を吐かなくなったという。

 この日、高田を訪れた花咲徳栄の広岡翔太主将(3年)は、高田の部員に「僕たちには分からないつらさもあると思うけど、仲間のために野球をやれば強くなる」と励まし、「夏に甲子園で試合をしましょう」と約束した。

 広岡君らに握手を求めた高田の村上渉副主将(3年)は「感謝の気持ちでいっぱい。花咲徳栄のように実力は無いけど、被災した経験を力にかえて、甲子園を目指す。震災には負けない」と意気込んでいた。

朝日新聞埼玉版)