上尾、復活の予感 春季高校野球県大会

◇夏へ“躍進の春”

 二回に失った2点が、この日の上尾にはずしりと重かった。先行逃げ切りの勝ちパターンに持ち込めず、24年ぶりの優勝を逃した。

 失策絡みで今大会8試合目にして初の先制点を許した。決勝独特の雰囲気で硬さと焦りがあったのか、失点直後の三〜五回の攻撃は9、7、9球であっさり終わり、八回の2死一、三塁の好機にも一本出なかった。

 それでも、昨秋の県大会で初戦敗退したチームが大きな成長を遂げた。失策が出ると連鎖反応のように崩れていた三宅も踏ん張り、四死球を出したときは逆にバックがエースを支えた。主将の新井は「できることを百パーセントでやってきた」と練習中は全力疾走とカバーリングを全員で徹底。勝ったときほど気を緩めず、技術では補えない部分にも力を注いだ。

 今チームから就任した高野監督が掲げる“競り合いに強い野球”が実を結びつつある。あとは劣勢をはね返す強さが必要だ。指揮官も「心技体でもうワンランク上を目指す」と引き締めるが、三宅の一本立ち、左腕伊藤の復調など夏に希望を抱かせる“躍進の春”だった。

◇鮮やかに好機演出

 スタメンに名を連ねた唯一の2年生・大南が、3安打の活躍を見せた。

 チーム全体で4安打と、湿っていた打線の中で一人気を吐いた。左打席から左へ右へ。鮮やかなバント安打も決め、7番打者らしくチャンスメークに徹した。

 低くて速い、ライナー性の打球を意識して練習を積んできた成果だ。背番号14は「うれしいし、自信につなげたい」と前置きした上で、「チームが負けたから浮かれてはいけない」。その鋭い視線は、早くも関東大会に向けられていた。

埼玉新聞