本庄一、先制点守れず 逆転負け

 第4日は1回戦4試合を行い、埼玉代表の本庄一明徳義塾(高知)に2−6で逆転負けした。明徳義塾の馬淵監督は春夏合わせて出場20度ですべて初戦突破。

 第4試合は春夏連覇を狙う興南(沖縄)が9−0で鳴門(徳島)を下し、2回戦へ進出した。興南は毎回の15安打と相手を打ち崩した。

 報徳学園(兵庫)は3−2で砺波工(富山)に競り勝ち、福井商は6−0でいなべ総合学園(三重)を下した。

【戦評】

 本庄一は2点リードを守れず、明徳義塾に逆転負けした。

 本庄一は六回1死一、三塁から捕逸と田村和の右前タイムリーで2点を先制した。

 しかし先発の田村和が持ちこたえられなかった。六回裏に代打座覇に左越えソロを浴び1点差。七回無死三塁から北川に右前打を許し同点とされると、2死一、三塁で打ち取った当たりが風に戻され中前に落ち、2点を勝ち越された。

 打線はわずか4安打。相手2番手・岩元には3回無安打に抑えられ、反撃できなかった。

◇大黒柱投打に奮闘

 勝っても負けても中心は背番号1だった。投打に奮闘したエース田村和は「もう少し粘り強い投球ができれば」と責任感をのぞかせた。

 六回、1点を先制した後の2死三塁で左前適時打。4打数2安打と結果を残し、「2年前はしょぼい球しか打てなかった。打撃面では成長を感じた」と胸を張る。

 だが、直後に痛い本塁打を浴びる。追い込みながら、高めの直球を左翼席へ運ばれた。七回2死一、三塁では打ち取った打球が風に戻され、中前へ落ち勝ち越しの2点二塁打に。「中飛だと思った。あれが落ちるのは相手に流れが行っていたから」と潔く認める。八回から救援の斉藤、設楽にマウンドを譲った。

 初出場の2年前は、1年生ながら4番を任され、須長監督も「これからどんなすごい打者になるのか」と期待を掛けるほどだった。昨秋の新チームからエースも担い、投打の大黒柱となって活躍した。

 「ここまで来られたのは田村がいたから。感謝したい」と女房役の葉梨。須長監督は「七回までよく投げてくれた」とねぎらいの言葉を掛けた。

◇理想の展開に“すき”

 これが甲子園の怖さなのか。本庄一は得意の接戦に持ち込み、願ってもない先制点を奪ったはずなのに、終盤に失点を重ねて逆転負けした。

 須長監督は「先に点を取ったことでいつものペースと違い、プレッシャーになった。みんなが勝てると思ってしまった」。無欲で県大会を勝ち上がってきたチームが大舞台で見せたわずかな欲が心のすきを生んでしまった。

 序盤は理想の展開だった。明徳義塾に攻められながら二回1死一、三塁ではスクイズを阻止し、飛び出した三塁走者を挟殺。四回も併殺でピンチを切り抜けた。

 六回の攻撃は本庄一らしさが凝縮されていた。先頭の田村海がバント安打で出塁。1死一、三塁から捕逸で先制し、田村和の適時打も飛び出した。「先攻なので攻めようとした。精いっぱいの攻撃をしてくれた」と須長監督も評価する。

 だが、直後に明徳義塾の代打座覇に特大のソロアーチを浴びると状況が一変。エース田村和は「勝負が早かった」と唇をかむ。七回に同点とされた後、2死一、三塁で相手の飛球が強風で流され、中堅の田村海の前に落ちる運のない当たりが決勝打となってしまった。

 県大会は終盤まで劣勢でも、粘って相手のミスに付け込む戦いができたが、全国は甘くなかった。「勝ち負けを意識しない言葉を掛けられれば」と須長監督。傾いた流れを引き戻せなかった。

 悔しい敗戦だが、選手は持ち味の「常笑野球」を貫き、試合後も涙はなかった。主将の葉梨は「最後まで笑顔でやれた。ここまで来たのが奇跡。全部出し切った」。ナインが口々に語った「楽しめた」という言葉が今後の財産だ。

◇大舞台でも常笑野球 本庄一初戦惜敗

 満員に膨れ上がった三塁側アルプス席が大きく揺れ動いた。第92回全国高校野球選手権大会第4日の10日、埼玉代表の本庄一明徳義塾(高知)に2−6で悔しい逆転負け。試合中も合言葉の「常笑野球」で伸び伸びとプレーした選手たちに、スタンドからは温かい拍手が送られた。

 地元応援団は約1200人がバス33台を連ね、9日午後9時に本庄、熊谷、秩父の3ヵ所から出発。学校側や父母会が把握していた以上の観客が集まった。4月まで野球部長を務め、今回は引率責任者の山浦秀一教諭(39)は「一般の方が多く、2千人は超えている。2年前に初出場したときより確実に多い」と驚く。葉梨裕佑選手の父・剛さん(44)は「甲子園は夢のよう。元気いっぱい明るく笑顔でやって」と選手を激励した。

 序盤戦は一進一退の攻防。2年前に甲子園の土を踏んだOBも応援に駆けつけ、当時3年生で9番サードだった木部翔馬さん(20)は「三者凡退が続くが、ゴロが多いのでいい。エラーもあるし、機動力とバントを使って運良く安打が一本出れば」と願った。

 その言葉通り、六回に田村海渡選手のバント安打でチャンスをつくり、相手のパスボールと田村和麻選手の安打で2点を奪うと、盛り上がりは最高潮に達した。チアリーディング部長の久保里加さん(3年)は「粘り強く一生懸命応援します」と選手と同じ姿勢。吹奏楽部バンドリーダーの坂部日陽里さん(3年)も「私たちはとにかく楽器を吹いて、みんなの役に立ちたい」と声援を送り続けた。

 終盤に逆転されて敗れはしたものの、試合後のスタンドは大きな拍手で選手たちをたたえた。小森亮輔選手の父で父母会長を務める俊則さん(47)は「残念だけれど、最後はみんな笑って終わったからよかった。甲子園は子どもの夢であり、親の夢。連れてきてくれてありがとうと言いたい」と感謝した。

◇「頑張った」熱い声援 本庄一の地元・本庄市

 本庄一の地元・本庄市では、市役所市民ホールに大型のテレビが置かれ、多くの市民がテレビの前で声援を送った。

 試合は五回まで0−0の投手戦。六回表、本庄一が一死一、三塁と攻め、捕逸と田村和麻投手の右前適時打で2点を先制すると、ホールに万歳、拍手が一気にわき起こった。

 最前席の男性は「田村君のタイムリーは見事な当たり。これでピッチングの方もさらに良くなる」と大喜び。期待が高まったが、明徳義塾が六回裏に本塁打で1点差に。七回には不運な当たりもあり、逆転を許した。

 市民ホールには「応援用に」と本庄一から200本のネーム入りうちわが届けられた。好プレーに惜しみない拍手が送られた。

 同市東台の高校生、鳥羽順子さん(16)は「埼玉大会の時から応援していた。甲子園で選手たちは一生懸命にプレーしていた。負けたけど、よく頑張った」と話していた。

埼玉新聞