浦和学院は圧勝 本庄一は辛勝 4強出そろう

 高校野球埼玉大会は25日、県営大宮球場で準々決勝2試合があった。浦和学院が所沢北にコールド勝ちし、2年前に北埼玉代表として甲子園に出場した本庄一が市立川越を1点差で破り4強入りした。準決勝は27日に同球場で行われる。

朝日新聞埼玉版)

浦和学院、電光石火の豪打爆発

 強烈な先制パンチを浴びせ、ふらついた相手に猛ラッシュ。三回までに8点を奪った浦和学院が投打に圧倒。Aシードの実力をまざまざと見せ付けた。

 所沢北は4回戦は逆転サヨナラ、5回戦は14安打で大勝し波に乗っていた。主将の星は、「勢いに負けているようでは甘い。初回から一気にいく」と意気込んでいた。

 主将の言葉は形になって表れた。一回表、好左腕戸谷に襲い掛かり4連打で4得点。1番石田が打席のいちばんベース寄りに立ち、死球で出塁。濱田が送りバントを失敗したものの、すかさず石田が二盗し、星が安打で続き1死一、三塁。主砲原が初球の高めの直球を、しぶとく中前にはじき返し、あっという間に先制した。

 勢いは止まらない。続く久保は「スライダーには食らいつき、ゾーンを上げて甘い球を仕留める」。狙い通りの戸谷の決め球、低めのスライダーをカット。高めに浮いたスライダーを右翼線に2点適時二塁打を放った。

 粘ったかと思えば、萩原大が初球のスライダーをいとも簡単に右前に運び、海野の内野ゴロで4点目を奪った。積極性と粘り強さを兼ね備えた浦和学院らしい攻撃だった。

 気落ちした相手から二回にも、二塁打3本で2点、三回には、9番小林の2ランで大勢を決めた。チャンスに畳み掛け、9安打で8得点。森監督も「集中してよく打ってくれた」と目を細める。

 それでも、四回以降は無得点に終わった打線に、星は「甘い球を逃していた」と課題を挙げる。投打に盤石の関東王者が準決勝へ、気を引き締めた。

◇所沢北、強豪相手の収穫の8強

 壁は厚かった。県立校で唯一、準々決勝まで進んだノーシードの所沢北だが、Aシード浦和学院にコールド負け。中野監督は「力負け。やっぱり先制点を与えたら厳しい」と潔かった。

 今大会1人でマウンドを守ってきたエース戸谷が、一回に4点を失った。先頭の石田を死球で歩かせると、1死一、三塁から4番原に直球を詰まりながら中前に運ばれ先制。捕手で主将の伊藤は「ほぼ要求通りに内角高めのボール球を投げてくれたが」と舌を巻く。

 強豪は畳み掛ける。続く久保には低めスライダーをファウルでカットされ、フルカウントから高めのスライダーを右翼線に2点二塁打を浴びた。「いつも空振りを取れる球を粘られた」と女房役。戸谷は「相手がうまかった」と脱帽する。

 それでも、最高成績に並ぶ6年ぶりの8強は色あせない。全校生徒の100%近くが大学に進学するため、部活動は午後7時までと決められている。選手は朝6時半から自主練を行うなどして時間を確保。伊藤は「強豪私立と違うやり方で、ここまで来られたのは自信になる」と言う。

 3番手で2年生の羽田が無失点に封じるなど、今後につながる収穫もあった。「本当に悔しい。もっと勝ち上がるには、総合力が必要だ」と指揮官。あくなき挑戦が、また始まった。

本庄一、接戦勝負お手のもの

 接戦になったらこっちのもの。本庄一が今大会3度目の1点差ゲームを制し、4強へ名乗りを上げた。須長監督は「相手の打線がいいので、勝つとは思わなかった。うれしい」と喜びを率直に表す。

 2−2の八回の攻防で、ここまで競り勝ってきた勝負強さを見せた。表の守備で市川越に1死二塁と攻められ、迎える打者は4、5番。捕手の葉梨は「一塁も空いていたので、2人でアウト一つを取ろうと思っていた」。4番弥田をスライダーで中飛に打ち取り、5番丹羽は直球で三振。

 「抑えてやろうと思わず、打たれてもしようがないと思っていたのが良かった」と完投した田村和。強力打線に対し、最初から開き直っていた。

 その裏の攻撃、敵失と犠打で1死二塁の好機をつくると、途中から7番に入った田村海が初球をセーフティーバントし出塁。続く烏山が右中間に決勝の2点適時打を放った。

 田村海は「バントはサイン。いつもやっているので自信があった」。須長監督は「打てないから下位はとにかくつないで、くしゃくしゃな野球がしたい」と汗と土にまみれた野球を思い描く。

 市川越は5回戦で坂戸西の好左腕長島をノックアウトした打線が自慢。それでも「監督に『前半は0−5で負けていてもこっちのペースだ』と言われていたので、焦りはなかった」と主将の葉梨。四回に1点を勝ち越されても、まったく動揺するそぶりはない。六回に同点、八回に勝ち越した。

 川越との1回戦は延長十三回の末、2−1で辛くも勝利した。須長監督は「あれを振り返ると、また試合ができるとは信じられない」と陽気に笑う。2年前に北埼玉大会を制したときもノーシード。派手さとは無縁だが、このチームは間違いなく、しぶとく強い。

◇市川越、“打倒私学”届かず

 2点を追う九回の攻撃。先頭の江沢の打球が中堅手の前に落ちた。「点を取るぞ」。市川越は最後の攻撃にすべてを懸けた。

 2死二塁、代打関根が期待に応えしぶとく右前タイムリーを放って1点差に詰め寄った。だが川野が左飛に打ち取られ、万事休す。

 5回戦で19安打12得点と爆発した打線はこの日、9安打放ちながら7残塁。同点の七、八回に先頭打者を塁に出したが、あと1本が出ず勝ち越せなかった。

 ナインは人目をはばからずに号泣。主将の丹羽は「仕方がない。下を向くな」と涙をこらえて絶叫した。

 チームは、「私立を破って甲子園にいきたい」と燃えていた。普段の練習も「私立はもっとやっている」と寸暇を惜しんで汗を流した。大会約2カ月前から朝6時半にグラウンドに集合して自主練習。放課後の部活動は、「早く上がれ」と言う新井監督の目を盗み、消灯するまではボールを使い、消えてからは走り込みや素振りをこなした。

 この日、これまで対戦した公立校の選手が「私立に勝ってくれ」と駆け付けた。願いかなわず、丹羽は「相手はバント一つとっても、細かいところが違った。まだ足りないのかな」とぽつり。「『よくやった』負けはない。打倒へは守備力が大事」と新井監督。厚い私立の壁を越える道のりは続く。

埼玉新聞