夢舞台 次はジョッキー 3年・長町卓矢君

 「自分の分も頑張って」。聖望学園の一塁側アルプス席では、野球部の長町卓矢君(3年)が、他の部員と踊りながら、声をからしていた。

 この日の試合に合わせ、夜行バスで応援に駆けつけた。ほかの3年生部員は全員、2日から兵庫県入りしていた。ぎりぎりまで埼玉に残ったのは、夢に向けた準備があったからだ。

 身長172センチ、体重45キロのきゃしゃな体。19日、千葉県白井市にある日本中央競馬会(JRA)の競馬学校騎手課程の第1次試験を受ける。

 中学の時、競走馬を育成するゲームに熱中し、競馬の世界の奥深さに引き込まれた。それ以来の「競馬オタク」だったが、今春、「体形が向いている」と思い、騎手を目指すことを考え始めた。5月上旬、岡本幹成監督に快諾してもらった。

 試験には生年月日に応じた体重制限がある。長町君の場合は46・5キロ以下で、約51キロあった体重を減らし、両親も納得させた。以前は野球のために太る努力をしていたが、「カロリー計算をして、あっさりしたものを食べるようにした。減量を始めた頃は体力が落ちてしんどかった」。

 筆記や面接、運動テストなどがある試験は、例年100人以上が受験し、最大15人しか合格しない狭き門だ。「野球で鍛えた体力をアピールしたい。あきらめずに頑張ることも野球で学んだ」。だから野球部をやめず、仲間と甲子園を目指した。

 子安史浩主将は「遠征でも1人でサウナに入り、食事制限をしていた。目標に向かって頑張っている姿を見て、『負けられない』と刺激になった」と感謝している。

 「おれたちも勝つから、長町も合格しろ」。そう言ってくれていた仲間たちは、精いっぱい戦ったが敗れた。長町君は「これだけ観客がいる中で、よく戦った。自分もファンの声援に応えられるような騎手になりたい」と言った。将来の夢は、最高峰のG1レースで勝つことだ。

朝日新聞埼玉版)