福島から転校・大浦さんら 新たな目標 川越工卒業式

◇希望

 県立川越工業高校(川越市西小仙波町、寺山弘校長)で10日、卒業式があった。264人の卒業生の中には、東日本大震災と直後の東京電力福島第1原発事故の影響で、福島県立小高(おだか)工業高校(同県南相馬市)から転校した大浦裕太さん(18)と川越(かわごし)愛里さん(18)もいた。晴れの門出を迎えた2人は「この2年間に後悔はない。ここから頑張る」と、新たな目標に向かって一歩を踏み出した。

◇夢一変…2年間に後悔ない

 川越さんは福島第1原発の1〜4号機が立地する大熊町、大浦さんは北隣の双葉町の自宅から小高工に通っていた。11年3月11日当時は1年生。大震災で家族は無事だったが、大浦さんは親友を津波で亡くした。避難所などを転々とした後、親類や知人を頼り、川越さんは川越市、大浦さんは所沢市に移って同年4〜5月から川越工で学び始めた。

 埼玉で過ごした2年間、当初は友人や知人がいなくてつらかったが、次第に学校や地元で親しい人ができ、進路などでも先生方が親身になって相談に乗ってくれたと2人は口をそろえる。

 小高工で野球部に所属していた大浦さんは川越工でも野球部に入り、新たなチームメートと野球に打ち込んだ。この日の卒業式では、学業とスポーツに秀でているとして県教育委員会表彰も受けた。

 小高工に進学した当時、大浦さんと川越さんの将来の夢はそれぞれ、「福島第1原発で働く」「東京電力で働く」ことだったが、大震災で夢は一変した。大浦さんは「(故郷には)戻りたいけど戻れない」といい、川越さんは「一時帰宅した時に現状を見て大きなショックを受けた。全部が元に戻ればいいが、そうはいかない」と考えている。

 大震災から2年。この春、2人は新たな夢に向かって歩き始める。順天堂大スポーツ健康科学部(千葉県印西市)に進学する大浦さんは「大学野球部では投手でレギュラーを目指す。将来は体育の先生になって、高校野球の監督になりたい」と話す。さいたま市などに拠点がある製薬会社に就職が内定している川越さんは「仕事をちゃんとバリバリやりたい」と意気込みを語った。

毎日新聞埼玉版)